Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
岐阜県飛騨川流域の排水路に生息するカワシンジュガイの糞粒中の微細藻類群集
秋山 吉寛岸 大弼伊藤 健吾近藤 高貴
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2018 年 76 巻 1-4 号 p. 65-78

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抄録

カワシンジュガイが野外で口から取り込む微細藻類の特徴を特定するため,カワシンジュガイの糞粒中に含まれる微細藻類の分類群および形態を調べた。2015年6月および10月に,飛騨川と連結する排水路にて,カワシンジュガイの成貝および未成熟貝を採集し,排泄された糞粒を採取した。10月は排水路の水も採取し,これらの試料中に含まれる微細藻類を分析した。糞粒から5門の微細藻類(Cyanobacteria門,Euglenozoa門,Ochrophyta門,Chlorophyta門,Charophyta門)が得られた。糞粒中の微細藻類の細胞およびコロニーの98~99%は,Ochrophyta門(珪藻綱)に属していた。葉緑体色素を持つOchrophyta門の細胞およびコロニーの割合は,排水路の水中(14~16%)よりも糞中(5~6%)の方が低かった。これらの結果は,カワシンジュガイが口から取り込んだ主要な微細藻類が珪藻であり,カワシンジュガイがOchrophyta門を消化した可能性を示している。一方,糞中のChlorophyta門の細胞およびコロニーの75%以上は葉緑体色素を持っていたため,Chlorophyta門は積極的に消化されなかったと考えられる。糞粒に含まれていた微細藻類の長さの範囲は5~690 μmであり,この長さの範囲に含まれる有機物は,カワシンジュガイの餌になる可能性がある。これらの微細藻類の特徴は,成貝と未成熟貝の両方の糞で見られた。新たに得られたこれらの知見は,野外におけるカワシンジュガイの餌の種類の解明に寄与する。

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© 2018 日本貝類学会
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