Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
Online ISSN : 2189-7697
Print ISSN : 1348-2955
ISSN-L : 1348-2955
短報
北太平洋西部の北海道恵山岬沖から採集された深海性エゾバイ類 (カシマナダバイ・エゾボラ属の 1種)の胃内容物
山上 竜生和田 哲
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 80 巻 1-2 号 p. 40-46

詳細
抄録

北海道南西部の恵山岬沖,水深700~950 mの4地点から,トロール調査によって採集されたカシマナダバイBuccinum kashimanumおよびエゾボラ属の一種Neptunea sp.の胃内容物を報告する。カシマナダバイでは498個体中207個体,エゾボラ属の一種では80個体中16個体の胃に摂餌の痕跡が認められた。胃内容物は,カシマナダバイから7種類(多毛類,ギボシムシ,巻貝,二枚貝,ホヤ,イソギンチャク,魚類)及びデトリタスと未同定種,エゾボラ属の一種から3種類(多毛類,二枚貝,ホヤ)と未同定種が認められた。両種に共通して,最も高頻度に検出された餌は多毛類であったが,餌の組成は採集地点間で異なった。餌の組成と摂食率に性差はみられなかった。これらの結果は他のエゾバイ科貝類から報告されている内容とも類似するが,一部の地点でカシマナダバイが頻繁に摂食していたギボシムシは,これまでどの近縁種の胃内容物からも報告されたことがない。エゾバイ科貝類は,生息環境や状況に応じてさまざまな食物を利用できるが,多毛類に限らず丸飲み可能なワーム形の底生動物はそれらの主要な餌資源となっていると考えられた。

著者関連情報
© 2022 日本貝類学会
前の記事
feedback
Top