2023 年 81 巻 1-4 号 p. 47-60
日本海からハナシガイ科ハナシガイ属の1新種,Thyasira inadai n. sp. イナダハナシガイ(新称)を発見し,記載した。種小名は稲田 陽氏に因む。本種は日本海と黄海に生息し,完新統の個体が新潟県上越市沖から知られる。本新種は,より浅海域に生息するThyasira tokunagai Kuroda & Habe, 1951 ハナシガイとはより大きな殻を持つこと,長く,狭い耳状突起,殻中央部の平坦面,溝で境されくぼむ小月面,狭い殻頂角,より大きな胎殻により区別される。本新種は胎殻や分子生物学的観点から北大西洋に生息する Thyasira gouldii (Philippi, 1845)(グールドハナシガイ, 新称)に近縁である。こうした系統関係の近縁性は中新世末期に開いたベーリング海峡を通じての移動による。