Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
大分県佐伯市沖で採集されたオウサマウニ類に寄生するヒロクチヤドリニナ属(新称;ハナゴウナ科)の 1新種
髙野 剛史
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2025 年 83 巻 1-4 号 p. 121-127

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抄録

ハナゴウナ科の腹足類は,現生全5綱の棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科3属(Nanobalcis, Sabinella, Trochostilifer)の種はいずれもオウサマウニ科Cidaridaeのウニ類に寄生することが知られる。うちSabinella属に分類される種は宿主の殻表面,または棘に瘤を形成しその中に寄生する。同属貝類の殻は(1)螺層が膨れ明瞭な縫合を有し,時に非対称に巻き,(2)体層および殻口が大きく,底唇(および外唇)の縁が外側に反り返り,また軸唇滑層が発達することで特徴づけられる。本報では,大分県佐伯市沖の水深290 mより採取されたオウサマウニ類Stereocidaris sp.の肛門周辺(囲肛部)に外部寄生する本属の1新種を記載した。これは日本近海におけるSabinella属の初記録となる。

Genus Sabinella Monterosato, 1890 ヒロクチヤドリニナ属(新称)

Sabinella kawatomii n. sp. カワトミヒロクチヤドリニナ(新種・新称)

殻は白色,塔型で僅かに曲がり,約9 mmに達する。後成殻は最大6.3巻,螺層は時に非対称に膨れる。初期の3巻は滑らかで丸みを帯びる一方,以降の層では肩が張り,成長線と波打つ浅い螺肋により不明瞭な格子状彫刻が刻まれる。外唇縁痕は明瞭で概ね0.9~1.2巻毎に現れる。体層は殻高の60~68%を占め,周縁は明瞭に角張る。殻口は大きく卵型。底唇と外唇の縁は外側に強く反り返る。軸唇はよく発達し,まっすぐで体層の軸から最大20°傾く。原殻は無色,蛹型で3巻からなる。後成殻との境界線は明瞭で,強く曲がる。種小名および和名は,本種の邦産標本を提供くださった川富光真氏(三重県)にちなむ。

カワトミヒロクチヤドリニナの殻形態は,ニュージーランドから記載されたS. infrapatula (Murdoch & Suter, 1906)と,オーストラリアから記載されたS. minuta (Hedley, 1903)に似る。一方本種は,主に螺層の肩がより張る点で前者と,より大きな体層を有する点で後者と異なる。ヒロクチヤドリニナ属にはこのほか9ないし10種が含まれるとされるが,これらは後成殻が滑らかで彫刻をもたず,螺層の肩が張らない点で容易に区別される。

本種はカリブ海から記載されたTrochostilifer eucidaricola Warén & Moolenbeek, 1989にも類似するが,この種は彫刻を欠き,原殻が4巻である。なお,この種の蓋を有する点,ならびに性的二型が顕著でない点は,Trochostiliferの特徴と異なる。カワトミヒロクチヤドリニナと形態的に近いこともあわせ,Sabinella eucidaricola (Warén & Moolenbeek, 1989)の使用を提唱する。

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