2025 年 83 巻 1-4 号 p. 128-134
2024年5月下旬から7月中旬にかけて,静岡県駿河湾の黄金崎公園でハナイカAscarosepion tullbergiの成体,卵,孵化稚仔が,雲見で成体が,ダイビング中に目撃された。太平洋側において,ハナイカの定着が実際に確認されているのは,長年,和歌山県紀伊半島以南であった。今回の静岡県駿河湾での目撃例は,太平洋側における再生産の北限記録となる可能性がある。南方系の種であるハナイカの再生産が駿河湾で確認されたのは,温暖化や黒潮大蛇行に伴う海水温の上昇等により,繁殖域が北上・拡大したことが要因と考えられる。今後,駿河湾にハナイカが定着するか継続的な調査が必要である。