2018 年 2 巻 1 号 p. 33-44
本稿の目的は、平成29年改訂(定)の新要領・指針等において「規範」がどう位置づけられているかを、特に領域「人間関係」とのかかわりに着目して明らかにするものである。
新要領・指針で「規範」と共起性が高い語には「主張」・「折り合い」・「芽生え」がある。領域「人間関係」における「規範」の用例からは、規範意識を芽生えさせることを、集団のなかで他者と関わり、そのなかで自己調整をする(折り合いを付ける)こととして観ていることがわかる。
新要領・指針で、「友達」はその用例からすると、折り合いを付けねばならない「対峙者」として捉えられる。新要領・指針の道徳性・規範として言われているのは、他者の要求に接したら自己の欲求を引っ込めること(自己抑制)である。領域「人間関係」とのかかわりで言えば、自己主張と自己抑制の均衡が自己抑制へと傾いたコミュニケーションの型が、「規範」として内面化がされる危険性を孕んでいる。