ビタミン
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マルチビタミンサプリメントは,ヒト免疫不全ウイル(HIV)感染者の病気進行に有用か? : HIV感染者の病気進行とHIVによる死亡率におけるマルチビタミンサプリメント(総合ビタミン剤)の無作為介入試験を中心に
末木 一夫
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2004 年 78 巻 12 号 p. 625-627

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抄録

2003年末現在, 世界中で約4,000万人のHIV感染者が存在し, これら感染者の大部分が後天性免疫不全症候群(AIDs:エイズ)へと進行する. 一方, 600万人の患者の内で抗レトロウイルス剤治療をうけている患者は8%以下である. このような状況のなかで, WHOは"2005年までに300万人を治療"といった発議をした. ある病期以上のHIVおよびエイズの治療では抗ウイルス剤治療が実施されるが, 副作用の問題, 医療費コストの問題がある. 他方, B群ビタミンが主に配合されたマルチビタミンサプリメントが, HIVの進行を遅延させる可能性があるという報告が発表されている. さらに, ビタミンB12__あるいはEの低血中レベルHIV感染者の病気進行を遅延させる, マルチビタミンサプリメントがHIVウイルス複製を低下させる, B群ビタミンおよびビタミンC, Eが細胞性免疫能を上昇させる,あるいは抗炎症性サイトカインレベルを増加させる, マルチビタミンサプリメントがCD4+, CD8+, CD3+リンパ球数を改善する, ビタミンE(800IU), C(1g)がin vitroの試験系であるが, 脂質過酸化を抑制することから, 酸化的ストレスによるウイルス数増加の抑制に関与するかもしれないといった, ビタミンのHIV感染による病気進行改善作用に関する観察的研究およびin vitro試験研究での報告がある.

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© 2004 日本ビタミン学会

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