補酵素がどのように誕生し,進化してきたかということは他の生体分子の進化と同様興味深い問題である.補酵素の誕生と進化を解明することは,代謝の成立と発展,ひいては生命のシステムを理解することにつながるために,学問的意義が高い.「進化」は再現できないので科学の対象にはなり難いとよく言われるが,化学進化については実験条件の改善などで原始に起こったことの再現に近づくことができるようになり,また,代謝の確立については原始の代謝の名残を残す生物の代謝の解析からかなりのことが推察されるようになってきている.本稿では補酵素の誕生と進化についての初期のさまざまな重要な洞察を踏まえて最近の知見を整理してみた.