ビタミン
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日光によるビタミンDの生成
中島 英彰
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2020 年 94 巻 9 号 p. 469-491

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抄録

 ビタミンDは、血中のカルシウム及びリン酸濃度の維持及び骨密度の維持を司っているが、2000年代以降、最近の日本人の特に若年女性の間で深刻なビタミンD欠乏が問題となってきている。ビタミンDは通常の生活において、魚やキノコなどの食物から摂取するほかに、日光浴による太陽紫外線照射によって、肌で生成することが可能である。1日に必要なビタミンDを産生することのできる日光浴時間に関して、これまで各機関や学会等は大まかな目安を示すにとどまり、緯度や季節、時刻によって大きく異なる紫外線強度に対応した最適な日光照射時間の目安を示すことは必ずしもできていなかった。我々は、放射伝達計算モデルSMARTS2を用いた計算により、ある場所・日時での地表に到達する太陽紫外線強度E (λ) を、280-400 nmの波長範囲で1 nm間隔に計算を行った。このようにして求まった地上に到達した波長別紫外線強度E (λ) に、国際照明委員会(Commission internationale de l’éclairage: CIE)によるビタミンD生成紫外線作用スペクトル曲線で示される相対影響度 SVitD (λ)を乗じ、紫外線領域で積分することにより、ビタミンD生成紫外線量 IVitD (W/m2)を求めた。これに、過去の文献で示された単位UV-B照射によって皮膚で生じるビタミンD生成係数を乗じることにより、人体で生成すると想定されるビタミンD量を求めた。さらに、1日に必要なビタミンD生成量を10 μgと仮定したときに必要となる日光照射時間を求めた。同様に、皮膚に紅斑を生じさせる最少紅斑紫外線量(1 MED: Minimal Erythemal Dose) IEry (W/m2)に達する日光照射時間ついても計算で求めたところ、長そで(600 cm2の皮膚を露出)で日光浴をし、10 μgのビタミンDを生成するのに要する時間の約3倍であることを突き止めた。今回の計算によって求められたビタミンD生成量や日光照射時間、1 MEDに達する時間等の計算結果は、「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」というHPから、日本11か所において実際の紫外線観測データをもとに、準リアルタイムで情報提供を行っている(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/index.html)。これらのデータを参考に、各季節各地点でふさわしい時間の日光浴を行うことが、健康な生活を送るうえで推奨される。

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© 2020 日本ビタミン学会

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