地域と笑いについて考える場合、江戸・東京、上方・大阪については、これまでに多くの議論がなされてきた。この二都以外でも、京都、名古屋、福岡は、地域の笑いの歴史を比較的容易に遡ることができ、その地域の笑いの文化や伝統が明らかになっている。残念ながら、これらの地域を除けば、地域の笑いについて、とりわけ史的側面が論じられることは極めて少ないのが現状である。日本の笑い=東京の笑いではない。各地域に独自の笑いの歴史がある。笑いが画一化、均質化する現在、地域の笑いの歴史を論じ、「笑いの風土」を明らかにすることは、自己アイデンティティーを再確認するきっかけにもなるはずである。本稿では、比較的史料が発見されている三重を事例に、文字史料を一瞥しながら笑いの歴史を探り、三重の「笑いの風土」の背景を論じる。古くは庶民層のみならず武士層でも笑いが珍重され、「笑門」の土地柄であることが明らかとなる。