事件や事故,自然災害などのトラウマティックな出来事に対する心理的影響の緩和(心の減災)に対する笑いヨガの有効性を検討するため,予備的な実験を行った。26 名の大学生(院生含む)を恐怖体験前に笑いヨガを行う「前LY(Laughter Yoga:以下LY と記す)群」(8名),恐怖体験後に笑いヨガを行う「後LY 群」(9名),恐怖体験のみを行う対照群(9名)の3群に分け,それぞれベースライン時,恐怖体験前,恐怖体験後,休憩後における唾液アミラーゼ値を測定した。併せてベースライン時,恐怖体験前,恐怖体験後における気分状態(日本語版POMS)も測定した。各群における唾液アミラーゼ値は「前LY 群」において他2群合計(「後LY 群」+「対照群」)よりもその変化量に有意傾向がみ
られ,「前LY 群」ではコルチゾール値の上昇の程度が対照群と比して緩やかであった。POMS 各因子得点について,今回「前LY 群」の休憩後の値が諸事情により得られなかったため,「前LY 群」(8 名)と,「後LY 群」(9 名)及び対照群(9 名)の全く同質な2 群を合わせた計18 名を新たな対照群として検討を行った。その結果,抑うつ(D),怒り(A) -敵意(H),混乱(C) において「前LY」群は対照群よりも有意に得点が低くなることが認められた。これらより恐怖体験前に笑いヨガを行うことはその後の心身への悪影響を緩和し,心の減災にも寄与し得る可能性が示唆された。
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