笑い学研究
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心理的援助への笑いとユーモアの適用に関する研究の動向と課題
心理療法、精神疾患、ユーモアと笑いのセラピーに焦点をあてて
森田 亜矢子
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 25 巻 p. 17-41

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抄録

本稿では、心理的援助に関する笑い研究とユーモア研究について、1900年以降に英語と日本語で出版された学術論文を整理し、研究の動向を記述した。論文の検索には、PsycINFOデータベースとPsycArticlesデータベース、および、J-STAGEデータベースを用いた。得られた論文をキーワードで分類し、年代で整理して記述したほか、研究のアプローチや内容にもとづいて、(1)病者に特有な笑いやユーモアの特徴に関する研究、(2)心理療法の技法としての笑いやユーモアの可能性を論じる研究、(3)パーソナリティ特性としての笑いやユーモアと精神的健康との関わりに着目する研究、(4)ユーモアのストレス緩和効果に関する研究、(5)心理的資源をもたらす笑いやユーモアの作用に着目する研究、の5つに大別して記述した。また、今後の課題として、「ユーモアの社会的作用についての検討」、「プロトコルの作成」、「因果関係の明確化」、「効果の検証」、「作用機序の解明」の5つを挙げ、それぞれについて述べた。笑いやユーモアを用いて行う心理的援助は、およそ60年の研究の蓄積を経て、発展を続けている。その対象は、精神疾患や身体疾患を有する人々から健常者まで幅広い。研究手法については課題が残されているが、慢性的な疾患を抱える人々にとって、長く続く治療を楽しいものにする笑いやユーモアには、期待が集まっている。

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