2020 年 27 巻 p. 3-18
笑いと健康に関する研究はここ数十年で飛躍的に報告数が増えてきた。それに伴い研究手法及び研究対象についても変遷がみられるようになってきた。そこで本稿では、2010年以降の笑いと身体心理的健康及び疾病との関連について文献的レビューを行うとともに、今後の課題を提示することを目的とした。文献検索の結果、うつ症状、不安、睡眠の質に関する無作為介入研究が複数行われるようになり、エビデンスレベルの高いメタ分析もいくつか報告されていた。また、生活習慣病、要介護等の身体疾患への影響も前向き研究での報告が増えてきた。これらの研究を、観察研究(①笑いと死亡、要介護との関連、②笑いと生活習慣病との関連、③笑いと認知機能との関連)、及び介入研究(①笑いが生活習慣病・身体的指標に及ぼす効果、②笑いが心理的指標に及ぼす効果)に分けて研究内容を概説した。加えて、日常生活において笑いを増やすことに関連する因子についても文献をもとに考察した。本研究の結果、笑いはストレス関連疾患及び生活習慣病など様々な疾患の予防・管理に有用である可能性があることが示唆された。