笑い学研究
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辰野九紫、登場
1929年の「ユーモア小説」界
藍木 大地
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 29 巻 p. 37-52

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抄録

 本論文は、戦前に活躍したユーモア作家・辰野九紫が『新青年』に発表した「青バスの女」を取り上げて、それが受容された理由と、その作品の面白さ・斬新さについて考察した。辰野が『新青年』に初登場した1929年は、文壇としても読者としても「ユーモア小説」を希求していた時期だった。特に出版社は多くの読者を獲得するため、新たなユーモア作家の発掘が急務だった。講談社系の雑誌に多くの作品を発表していた佐々木邦の対抗馬として、『新青年』を発行する博文館が見出したのが辰野九紫であった。「青バスの女」に描かれた〈ユーモア〉は、風刺や登場人物のおかしさだけでなく、地の文に見られる様々な技巧により生み出されていた。「青バスの女」以降、辰野九紫は博文館の大衆向け雑誌『朝日』に作品を発表するなどして、戦前の「ユーモア小説」界で、佐々木邦・獅子文六とともにその普及に努めていくのだった。

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