2023 年 30 巻 p. 109-120
本研究の目的は,対人関係においてストレスを経験するような場面でユーモアを考え出すことが,その場面に対するストレス反応を軽減するかを探索的に検討することであった。大学生396名を対象とし,対人摩耗,対人劣等,対人葛藤の3つの対人ストレス場面のシナリオを用いて場面想定質問紙を実施した。提示場面においてユーモアを使って対処したユーモア対処群,ユーモアを使って対処するよう教示されたが考えだすことができなかった無回答群,場面を提示された直後にストレス反応を測定した統制群の3群について,各場面でのストレス反応を被験者間一要因分散分析により比較した。その結果,対人摩耗場面においては,不機嫌・怒り得点でユーモア対処群が統制群よりも有意に低い値であり,対人葛藤場面においては,すべてのストレス反応得点でユーモア対処群が統制群よりも有意に低い値であった。ベースラインのデータがない等の限界はあるものの,ある種の対人ストレス場面においてユーモアを考え出すことがそのストレッサーの影響を緩和する一助になる可能性を示した。