抄録
水稲の有機栽培における雑草防除および施肥にかかわる分野を調査範囲として,エネルギー消費量および地球温暖化にかかわるCO2排出量を指標とした環境評価を行った。茨城県河内町で機械除草主体の有機栽培を行っている農家と茨城県龍ヶ崎市で物理的雑草防除法である紙マルチを用いて有機栽培を行っている農家の水稲栽培法を聞き取り調査した。紙マルチによる有機栽培法のエネルギー消費量(4347MJ/10a),CO2排出量(307.8kg/10a)が,他の栽培法に比べ多かった。これは紙マルチ資材の製造に多くのエネルギーを消費し,CO2を排出していることに由来していた。次いで,機械除草主体の有機(簡易耕起)栽培のエネルギー消費量・CO2排出量は,ともに慣行栽培に比べやや多い傾向にあった。しかし,機械除草主体の有機(簡易耕起)栽培の10aあたり収量が他の栽培法に比べ低いため,玄米100kg生産当りに換算した場合のエネルギー消費量,CO2排出量,作業労働時間は化学的雑草防除を行う慣行栽培より明らかに多くなった。以上のことから,有機栽培での雑草防除や施肥方法にかかわるエネルギー消費量とCO2排出量に関する環境負荷が,慣行の化学的防除法に比べ少ないとは言えなかった。