雑草研究
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特集 わくわくドキドキ,おもしろバイオロジー 雑草サイエンス最前線
水田雑草の生存戦略;種間比較から見えてくること
大川 茂範
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2016 年 61 巻 1 号 p. 38-45

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抄録

田んぼ(水田)での米作り(稲作)は“雑草との戦い”。宮城県で問題となっている水田雑草について,その生き残り術(生存戦略)を比較し,問題化の要因について雑草と人間の双方の立場から考察する。イネを栽培する田んぼでは,イネと形や性質の似たノビエが好敵手。タネ(種子)だけでなくイモ(塊茎)でも繁殖できるクログワイやオモダカも手強い敵である。最近では除草剤が効かない“除草剤抵抗性”のイヌホタルイやコナギも問題となっている。また,田んぼではイネとダイズ等を交互に作付けすること(水田輪作)もあるが,水を張らないダイズ作で増加したアメリカセンダングサやクサネムが翌年の稲作で問題となることもある。沿岸部に局在するコウキヤガラ等,地理的遍在分布を示す雑草も。最近水田地帯でも目立つアレリウリや帰化アサガオ類は飼料輸入や有機物循環に乗じて地域に侵入しているとみられる。これらの水田地帯で問題化する雑草種の6つの生存戦略は,農業・農村が抱える6つの雑草問題化の要因と深く関わっている。水田雑草の生存戦略は「人間の行う“米作り”に巧みに“適応する”こと」に他ならない。

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© 2016 日本雑草学会
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