雑草研究
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61 巻, 1 号
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原著論文
  • 松嶋 賢一, 森田 弘彦
    2016 年 61 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    寒冷地の水稲湛水直播栽培においてイヌビエを適切に防除するためには,イネ播種後の水田の水条件とイヌビエの出芽との関連性を的確に把握する必要がある。本研究ではイヌビエ種子の出芽に対する湛水の影響を圃場において検討した。秋田県内の水田13地点から採種した種子を湛水深2 cmの湛水区と同0 cmの落水区の2条件で5月中旬と6月中旬にプラスチック容器に詰めた土壌に播種を行い,出芽数を追跡した。最終出芽率は5月中旬播種では4採種地の,6月中旬播種では1採種地の種子で落水区に比べ湛水区で低かった。平均出芽日数,出芽斉一性値は播種時期にかかわらず全採種地の種子で落水区に比べ湛水区で大きい値を示した。また,湛水区では6月中旬播種に比べ5月中旬播種で平均出芽日数,出芽斉一性値とも大きかった。一方,秋田県内の水稲直播栽培圃場3地点から採種した種子をポットに詰めた土壌に播種後湛水し,その20および30日目に落水した区では出芽率が落水後に急激に上昇した。イヌビエは浅い湛水条件下で出芽可能であるものの,出芽期間が長期化して不斉一となり,それが低温ほど助長され,さらには落水が契機となって出芽が促進されることが明らかになった。
  • 保田 謙太郎, 中山 祐一郎
    2016 年 61 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    タイヌビエ(Echinochloa oryzicola)の日本国内での地理的変異を明らかにするため,沖縄県を除く636地点で穂を収集し,小穂C型とF型の分布を調べた(調査1)。また,日本国内4ヶ所の標本庫に収蔵されている87点の標本を対象に両型の分布を調べた(調査2)。調査1ではC型は396地点で,F型は377地点で収集された。種間重なり合い指数(ω)からは両型の分布は独立であり,Moran’s I統計量からは両型とも有意な正の空間的自己相関を持ち特定の地域に偏って分布していると判断された。調査2では北海道と近畿地方で採集された標本が多く,それら地域での傾向は調査1の結果に類似した。両調査によってC型は東京都,神奈川県,山梨県,静岡県,愛知県,近畿地方,岡山県,鳥取県,広島県,山口県,四国地方,福岡県,大分県までの連続した地域で非常に高い頻度で分布しており,F型は北海道,東北地方,北陸地方,長野県までの連続した地域と千葉県と鳥取県で非常に高い頻度で分布していることが明らかになった。C型は太平洋側の水田中に多く,F型が日本海側の水田中に多い傾向にあるとする従来までの見解を一部修正した。
短報
特集 わくわくドキドキ,おもしろバイオロジー 雑草サイエンス最前線
  • 市原 実
    2016 年 61 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
  • 藤野 美海, 汪 光熙, 冨永 達
    2016 年 61 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
  • 大川 茂範
    2016 年 61 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    田んぼ(水田)での米作り(稲作)は“雑草との戦い”。宮城県で問題となっている水田雑草について,その生き残り術(生存戦略)を比較し,問題化の要因について雑草と人間の双方の立場から考察する。イネを栽培する田んぼでは,イネと形や性質の似たノビエが好敵手。タネ(種子)だけでなくイモ(塊茎)でも繁殖できるクログワイやオモダカも手強い敵である。最近では除草剤が効かない“除草剤抵抗性”のイヌホタルイやコナギも問題となっている。また,田んぼではイネとダイズ等を交互に作付けすること(水田輪作)もあるが,水を張らないダイズ作で増加したアメリカセンダングサやクサネムが翌年の稲作で問題となることもある。沿岸部に局在するコウキヤガラ等,地理的遍在分布を示す雑草も。最近水田地帯でも目立つアレリウリや帰化アサガオ類は飼料輸入や有機物循環に乗じて地域に侵入しているとみられる。これらの水田地帯で問題化する雑草種の6つの生存戦略は,農業・農村が抱える6つの雑草問題化の要因と深く関わっている。水田雑草の生存戦略は「人間の行う“米作り”に巧みに“適応する”こと」に他ならない。
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