日本各地の河川堤防や河川敷において,アブラナ属(Brassica)の植物が定着して優占し,春季に一斉に開花する群落が見られている。また近年,穀物輸入港の周辺の路傍で“外来ナタネ”の定着・自生が確認されている。日本では以前からアブラナ属の自生種に対する誤同定が多い状況が続いており,分布や生態に関する実態の正確な理解を妨げている。日本におけるアブラナ属,とくにアブラナとセイヨウアブラナ,カラシナの3種について概説し,その形態的・生態的な特徴を示した。さらに,2000年以降に出版された主要な帰化植物等の図鑑と,図や解説のある主要な地方植物誌におけるアブラナ属の掲載状況を検討した。主要な専門書(図鑑等)において,栽培種と認識されているアブラナが掲載されていない,あるいは誤りを含む記述がされており,それがアブラナをセイヨウアブラナとして誤同定され続けている主因と思われる。今後,アブラナ類の調査について,正確な種同定に基づいて再検討した上で,影響の再評価がなされるべきである。