雑草研究
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ATAによる畑地の多年生雑草防除
川島 良一丸山 宣重
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1963 年 1963 巻 2 号 p. 64-71

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抄録

(1) 本研究は, ATAを中心に, 現在畑地の雑草防除について未解決の分野であつた多年生雑草防除の技術体系化を試みたものである。 畑地の多年生雑草のうち, 一般に問題になつているものでは広葉のものが多いが, ATAはこの面にすぐれた作用特性をもつているので, 大豆, リンゴおよびブドウを供試し, 薬害との関係を考慮しながら, 雑草化したワサビダイコンを中心に, スギナ, ジシバリなどを対象として1959-'63年に桔梗ケ原分場とその周辺および現地で各試験を実施した。
(2) 研究結果の要点は次のようである。
1) ATAはワサビダイコンなどの広葉の多年生雑草に対し極めて防除効果が高く, さらに大豆のような繁茂性の大きい作物の併用によつて効果が増大した。
2) ATAは大豆畑での播種前雑草処理の場合, 大豆に対する影響について実用的に問題はなかつた。
3) ATAは禾本科以外の多年生雑草を対象とした場合, MCPまたは2,4-Dとの混用 (合) によつて相乗効果が認められ, また, 供試した混用 (合) 剤のうちで最もまさつた。
4) ATAの使用量と使用割合は, a当り有効成分でATA 5-20g+2,4-D (MCP) 10-20gが適当と思われた。
5) ATAの果樹園への利用については, ブドウやリンゴへの影響が認められないで, 園内のスギナやジシバリなどに著しく効果的であつて, その適応性は極めて大きかつた。
6) スギナに対する薬剤使用量は少なめでよく, ジシバリには多めとし, 発生量が極めて多い所では期間をおいて2-3回散布する必要がある。
(3) 以上の研究結果によつて, ATAの実用性を確めることができたと考えるが, このことを基本として, 今まで明らかになつている1年生雑草の防除技術と組合わせれば, 畑作または樹園地における禾本科を除いた雑草防除の体系化が可能となる。 なお, 今後の問題点としては, 適用作物, 適用雑草の範囲の拡大とその使用法の確立およびATAの特性の基礎的な解明などが残されているように思われる。

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