雑草研究
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除草剤の酸素電極法による光合成阻害力の検定
坂 斉千坂 英雄
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1982 年 27 巻 3 号 p. 217-224

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抄録
酸素電極法により, 開花期のイネ (品種, 密陽23号) の止葉の光合成に対する53種類の除草剤および代謝阻害剤の阻害力を調べ, 次の結果を得た。
1) ヒル反応阻害型除草剤は, 若干の例外 (ioxynil, bromoxynil および bentazon) を除いて, いずれも葉片光合成を顕著に阻害した。各除草剤が示す光合成の50%阻害濃度 (pI50) は10-6M~10-4M前後であった。本来ヒル反応阻害力が弱い bentazon のpI50は10-3Mオーダーで, ioxynil は強力なヒル反応阻害剤にもかかわらず, bentazon に似たpI50をもっていた。
2) 呼吸攪乱型薬剤のpI50は, 2,4-DNPを除いて, ヒル反応阻害型薬剤のそれより若干弱く, 10-4M~10-3M前後であった。
3) オーキシン型と有糸分裂阻害型および大部分の蛋白質・核酸合成阻害型と光関与型の除草剤は, 本実験で使用した濃度範囲では光合成に影響せず, 従ってpI50値を求めることができなかった。
4) 光関与型除草剤として分類されている paraquat と diquat は, いずれも, ヒル反応阻害型や呼吸攪乱型の除草剤よりも, 明らかに高濃度で光合成を阻害し, そのpI50は10-2M~10-1Mオーダーと推定された。
5) ヒル反応阻害とともに阻害的脱共役作用をもつ ioxynil と, 蛋白質・核酸合成阻害とともに酸化的リン酸阻害あるいは脱共役の作用をもつ CIPCと methazoi のpI50は, 10-3Mオーダーで, 呼吸攪乱型薬剤に似た光合成阻害作用を示した。
6) 53種類の薬剤のなかには, 製剤中の溶剤の作用によって光合成阻害が発現すると思われるものが認められた。
7) ヒル反応阻害型除草剤と呼吸攪乱型除草剤のうち19種類の薬剤のpI50を, 参考として引用したクロロプラストのヒル反応を50%阻害する濃度 (HI50) と対比させたところ, 両者の間には高い正の相関 (γ=0.697**) が認められた。
以上のように, 本結果は, 薬剤のpI50の有無やその値のちがいと各薬剤グループがもつ作用機構との相互関係を明らかにすることができた。今後, この手法は, 未知薬剤のスクリーニングや作用機構解明の一助になるものと期待される。
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© 日本雑草学会
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