雑草研究
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N-〔(R)-2, 3-Epoxypropyl〕-N-〔(R)-α-methylbenzyl〕-2, 4, 6-trimethylbenzenesulfonamide (UY-510) の除草活性
米山 弘一一前 宣正近内 誠登竹松 哲夫牛ノ濱 一行直原 哲夫
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1983 年 28 巻 4 号 p. 285-290

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抄録

N-〔(R)-2, 3-Epoxypropyl〕-N-〔(R)-α-methylbenzyl〕-2, 4, 6-trimethylbenzenesulfonamide (UY-510) は, 立体化学を含めた化学構造と植物生理活性についての検討から, タイヌビエ (Echinochloa oryzicola) に対する強力な除草活性と, イネに対する高い安全性を兼ね備えていることが明らかになった。そこで, UY-510の除草作用特性を詳細に検討し, 圃場による実用化試験を行った。
イネ, タイヌビエ, ダイコンの発芽および初期生育に対するUY-510の影響を, シャーレ試験により調べた。その結果, UY-510は3,000ppmの高濃度でも発芽阻害作用を示さなかったが, 発芽後の生育を強力に阻害し, 特にタイヌビエの地上部に対する生育阻害が顕著であった。また, 植物間に明らかな感受性差異が認められ, UY-510の100ppm処理区では, イネとダイコンに対する生育阻害は全く認められなかったが, タイヌビエの生育は完全に阻害された (Table 1)。
水田状態の検定 (ポット試験) では, 雑草の発芽前処理により高い除草効果を示した。UY-510は, タイヌビエに対してブタクロールの約2倍程度強い除草活性を示し, イネに対する薬害はなく, 優れた選択性を示した。雑草草種間では, タイヌビエが最も感受性が高く, ホタルイ, コナギでは, やや低かった (Table 2)。
UY-510およびブタクロールに対するイネおよびタイヌビエめ生育ステージ別の感受性差異を, 発芽時, 0.5葉期, 1葉期, 2葉期についてポット試験により検定した。その結果UY-510はすべての生育ステージで高い選択性を示し, 特に2葉期以後のイネに対しては, 8,000mg/m2以上の高薬量でも全く影響を与えなかった。同一生育ステージにおけるイネとタイヌビエに対する50%生育阻害薬量 (ED50) の比較では, ブタクロールにもある程度の選択性が認められたが, ブタクロールではタイヌビエに対する90%生育阻害薬量 (ED90) はイネに対するED50とほぼ一致し, 作物と雑薬間の実際的な選択性はないものと考えられる。一方, UY-510ではタイヌビエに対するED50とイネに対するED50に大きな差があり, 作物 (イネ) と雑草 (タイヌビエ) の間の実際的な選択性を有することが判明した (Table 3)。
UY-510 の土壌中の移動性を土壌カラムを用いて検定した結果, ブタクロール, ベンチオカーブに比べて下方移動は小さく, 1~2cm以内に保持されていた。このことから, 漏水田でも安定した除草効果を示すものと考えられる (Fig. 1)。
2葉期のイネを移植し, 3日後に薬剤を処理した圃場試験では, UY-510の25mg/m2の処理で, 移植イネに対して全く薬害を与えず, タイヌビエを完全に防除できた (Tables 4, 5)。直播イネに対する圃場試験では, 播種3日後に薬剤を処理した結果, ブロクロールは, タイヌビエを完全に防除できる薬量では直播イネも枯殺した。一方, UY-510 では, イネの初期生育が若干抑制されたが, その後徐々に回復し, 無処理区と同等の生育を示した。また, 処理1ヶ月後の調査では, ブタクロール処理区では残効切れにより除草効果が低下したが, UY-510には長期抑草効果が認められた (Table 4)。
以上のように, UY-510はタイヌビエに対する強力な除草活性と, イネに対する高い安全性を兼ね備え, 優れた残効性を示し, 土壌中の下方移動も小さいことから, 特に直播栽培でのヒエ属防除剤としての適用性が高いことが判明した。

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