抄録
シコクビエの propanil 抵抗性機構をさらに詳しく調べるため, 葉緑体への propanil 吸着及びその光合成電子伝達系阻害について検討した。水耕法にて3~4葉期まで育てたイネ (Oryza sativa L. cv. Nihonbare), タイヌビエ (Echinochloa oryzicola Vasing.) 及びシコクビエ (Eleusine coracana (L.) Gaertn.) の葉から抽出した葉緑体の光合成活性をメチルビオロゲンの光還元反応を利用した過酸化水素生成にともなうO2の減少を酸素電極を用いて測定した。propanil の光合成阻害のI50はイネで3.2×10-7M, タイヌビエでは2.8×10-7M, シコクビエでは3.7×10-7Mであり, 供試した3植物の間でほとんど差はなかった (Figure 1)。また阻害に対する逆数プロットをとると, 阻害定数 (Ki) においても3植物の間で差はなかった (Figure 2, Table 1)。
次に 14C-propanil を用いて葉緑体への親和性について調べた。イネから抽出した葉緑体はタイヌビエから抽出した葉緑体に比べて特に propanil 高濃度処理区で若干吸着量が大きかった (Figure 4)。また逆数プロットをとると, propanil 高濃度区における低親和性吸着と低濃度区における高親和性吸着の2つに分けることができた (Figure 5)。後者から吸着定数 (K) と阻害剤に対するクロロフィル量を算出すると, KiとKはほぼ同じ値を示しており, 吸着と阻害の関係がほぼ一致した。以上のことから, propanil に対する葉緑体レベルでの植物種間差は少なく, このことがシコクビエの propanil 抵抗性の主要因ではないことが確かめられた。