雑草研究
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Orbencarb sulfoxide および benthiocarb sulfoxide のクロルベンジル部分のダイズ幼苗中における代謝運命
右内 忠昭池田 光政富澤 長次郎
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1986 年 31 巻 3 号 p. 228-237

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抄録
畑地用除草剤 orbencarb のダイズ幼苗中における代謝経路を明らかにするため, orbencarb の重要な代謝中間体である orbencarb sulfoxide の代謝試験を実施した。14C標識 orbencarb sulfoxide 水溶液に第2本葉期のダイズ茎部を浸して48時間栽培後, orbencarb sulfoxide の挙動と代謝物の化学構造を合成標品との co-chromatography によって検討した。その結果, 処理放射能の64%が植物体に吸収され, 他の放射能は未変化の orbencarb sulfoxide の形で水溶液に残った。植物に吸収された放射能の大部分が代謝物として存在し, orbencarb sulfoxide は植物中全放射能のわずか1%であったことから orbencarb sulfoxide は植物中で速やかに代謝されることが明らかになった。Orbencarb sulfoxide の2-chlorobenzyl 部由来の代謝物として, S-(2-chlorobenzyl) cysteine 誘導体5個, 2-chlorobenzyl alcohol, bis (2-chlorobenzyl) disulfide, 2-chlorobenzylsulfonic acid が同定された (Table 2)。植物中全放射能の10%をこえる主要代謝物はS-(2-chlorobenzyl) cysteine, S-(2-chlorobenzyl)-N-malonylcysteine および2-chlorobenzyl alcohol の糖抱合体であり, 特に cysteine 残基を含む代謝物の総和は43.5%であった。これらの代謝物は親化合物である orbencarb からも主要代謝物として見出されていることから, orbencarb から orbencarb sulfoxide を経由する含 cysteine 化合物や2-chlorobenzyl alcohol への代謝は orbencarb の重要な植物代謝経路であることが示唆された (Fig. 2).
同様な条件下, orbencarb sulfoxide の4-クロル異性体である benthiocarb sulfoxide (非放射性) を処理したところ, 代謝物としてS-(4-chlorobenzyl) cysteine がN-acetyl-O-methyl 誘導体として単離, 同定され (Fig. 1), その生成率は植物体に吸収された benthiocarb sulfoxide の4.1%であった。
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