抄録
ミズガヤツリ (Cyperus serotinus ROTTB.) の地下部に処理した naproanilide [2-(2-naphthoxy) propionanilide] の吸収, 移行および代謝と塊茎形成阻害作用との関連性について検討した。
1. 根および根茎によって吸収された14C-naproanilide に由来する14Cは, 茎葉全体に認められ, naproanilide ならびにその代謝産物が茎葉に移行することが示された (Fig. 1, Table 3)。14C量は, 根茎で最も多く (Table 3), また, その先端に多く存在する傾向がみられた (Fig. 1)。
2. 14C-Naproanilide は, 比較的速やかに代謝され 2-(2-naphthoxy) propionic acid (M-1), methyl-2-(2-naphthoxy) propionate (M-1), 薄層板上での原点部あるいは未抽出残渣画分に代謝産物がみられた。各代謝産物の割合は, 器官によって異なり, M-1およびM-2の割合は根茎で最大であった (Fig. 2)。
3. M-1およびM-2は, 各器官の乾物生長を抑制する作用が弱い場合でも, 根茎に著しい奇形を発現させるとともに塊茎形成をほぼ完全に阻害し, naproanilide に類似した作用を示した (Table 1)。
4. M-1, M-2は, naproanilide と同様に, 根茎のRNA生合成を各器官内では最も顕著に促進した (Table 2)。
5. 奇形の発現ならびにRNA生合成の促進のいずれにおいても, 各器官の中で, 根茎が naproanilide に対して最も高い感受性を示すことと, 根茎中のM-1, M-2量が最も多いこととの間に密接な関連性が認められた。しかし, 上記の作用と naproanilide の存在量との間には, 関連性が認められなかった。
6. 以上の結果から, naproanilide による C. serotinus の塊茎形成を阻害する作用は, 根茎中に存在する本剤の代謝産物であるM-1ならびにM-2によるRNA生合成系の攪乱によるものと推察される。