雑草研究
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琉球列島のサトウキビ畑における雑草の生理・生態
第10報 生育初期におけるサトウキビとツノアイアシの競合
石嶺 行男村山 盛一松本 重男
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1988 年 33 巻 2 号 p. 122-128

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抄録

サトウキビ畑の一年生草のうちサトウキビの生育または収量に有害な影響を及ぼすと推定されるイネ科のツノアイアシをサトウキビと混植し, 両草種の競合によって相互の生育に現れる反応の程度を調べるとともに, 両草種をそれぞれ単植した場合すなわち競合のない条件下で栽培した時の結果を比較検討することにより, ツノアイアシの特性を主として光競合の観点から明らかにすることを試みた。
1. サトウキビの単植区における地表面相対照度は, 生育期間の経過とともに直線的に減少し, 植付後120日に株間で2%, 畦間で9%に低下した。今回の実験範囲には植付後120日以降すなわちサトウキビの初期生育後における生育および相対照度の推移は含まれていないが, この結果から推測するとサトウキビの群落内でツノアイアシはサトウキビの生育に伴って受光量が減少し, もしくは遮光が増大すれば, その影響を受けて生育を阻害されるものと思われる。
2. 単植区間では, ツノアイアシの生育は生育期間の初めにサトウキビに劣り, 中ごろには急激に伸長してサトウキビに勝ったが, 生育期間の終りの播種後120後には生育は再びサトウキビに劣った。
3. 混植後30日間除草しなかった区では, 除草時におけるツノアイアシの影響はほとんど認められず, サトウキビはそれ以降も単植区とほぼ等しい生育推移を示した。
4. 混植後60日間除草しなかった区でも, 上述同様に除草時におけるツノアイアシの影響はほとんど認められなかったが, 生育期間の終りにサトウキビの生育に変化が現れ単植区に比べて著しく劣る結果を示した。このように除草放任期間が30日の場合と60日の場合でサトウキビの生育に差が生じたのは, 後者で除草後もツノアイアシの影響が消滅せず残存したことをうかがわせた。
5. 混植後90日間除草しなかった区では, サトウキビの生育は単植区に比べ除草の時点ですでにツノアイアシに著しく劣り, それ以降も上述同様ツノアイアシの残存影響を反映して生育が低下し, 生育期間の終りにはツノアイアシとの間にさらに顕著な差が生じている。
6. 混植後120日間除草しなかった区でも, サトウキビの生育は単植区に比べて, ツノアイアシに著しく劣り, 除草時期の遅延によってツノアイアシの影響が顕著に現れてくることがうかがわれた。
7. サトウキビの収量決定に大きく関与する主茎重, 分げつ数および分げつ茎重は除草時期が生育期間の初めを過ぎると急激に減少しており除草時期の遅延に伴って減収が生じる可能性があることが推察された。しかし, この結果が単に光競合によるものかどうかは不明で, これに加えて両草種間における土壌養分や水分の奪い合いが関与要因として考えられる。
8. 上述の実験結果を整理すると, ツノアイアシの除草時期としてはサトウキビの生育に影響が生じない出芽後30日以内が除草効果および省力の点からみて適切であると判断される。

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