抄録
フラサバソウとオオイヌノフグリは百数十年, あるいはそれ以前に帰化した同属の類似種である。フラサバソウの密な分布域は狭く, オオイヌノフグリとは対照的である。本報では両種の生殖生態を比較して, 分布との関係を考察した。
両種は自動的に自家受精した。また他殖も可能であった。単為結実はしなかった。
筑紫野市原と, 8km離れた同市原田の自生群落 (それぞれA, B群落とよぶ) で採取した両種の幼植物 (A, B植物) を育て, 袋掛けによって自殖種子SA, SBをえた。またA群落から放任採種した。さらにそれぞれ種内の人工交配によって他殖種子F1 (A×B) をえた。以下便宜上系統とよぶ。
これら2雑草の各4系統を, それぞれラテン方格法で比較栽培した。生育量や種子生産数について, オオイヌノフグリでは4系統間に顕著な差はなかった。フラサバソウでは, SA, SBはF1 (A×B) に比べ有意に少なく, 近交弱勢を認めた。それ故, 本種は1個体孤立して生じても, 弱勢のために生存と繁殖ひいては定着に不利であろう。
両種の自生群落で訪花昆虫を採集したところ, 3目37種におよんだ。