雑草研究
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半島マレーシアの直播水田におけるアゼガヤ (Leptochloa chinensis (L.) Nees) の発生密度が水稲 (Oryza sativa L.) の収量とその構成要素に及ぼす影響
パネ ハムダンマンソール マショール渡辺 寛明
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1996 年 41 巻 3 号 p. 216-224

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抄録

半島マレーシアの水田では, 1980年代以降の急速な水稲直播栽培の普及に伴って雑草問題が深刻化している。特にノビエ, アゼガヤ等の一年生イネ科雑草の多発が問題となっている。そこで, 直播水田におけるアゼガヤ (Leptochloa chinensis (L.) Nees) の生育と雑草害の程度を検討するために, 半島マレーシア北西部に位置するムダ灌漑地区で圃場試験を実施して, アゼガヤの発生密度が直播水稲の収量と収量構成要素に及ぼす影響を解析し, 以下の結果を得た。
アゼガヤの初期生育が水稲播種後の激しい降雨によって一時抑制されたため, 播種後45日目における水稲の草丈と茎数に及ぼすアゼガヤの発生密度の影響は認められなかった (Table 1)。しかし, 収量構成要素の中では千粒重がアゼガヤの発生密度の影響を受けて有意に減少し (Table 2), m2当たりの穂数もアゼガヤの発生密度が高まるにつれて大きく減少した (Fig. 5)。直播水稲の穀実収量は, アゼガヤの密度の増加に伴いm2当たりの穂数および粒数に同調して減収した (Fig. 2, Fig. 3, Fig. 4)。アゼガヤの密度が16個体/m2以上になると水稲収量は有意に減収し, 40個体/m2では無発生区の収量 (4.44t/ha) に対して35%の減収を記録した (Table 2)。
以上の結果から, 直播水田におけるアゼガヤの生育は, 初期は緩慢であるが発生後1ヶ月を経過するとその生育は旺盛になること, アゼガヤが多発した場合には, 生育中期以降の穂数決定時期から登熟期間にかけてアゼガヤと水稲の間に強い競合が起こり, 水稲の減収を招くことが明らかになった。

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