抄録
水田の畦畔の多機能性に果たす畦畔植物の役割を明らかにするために, 近畿地方を中心とした畦畔の調査をもとに, 畦畔を構成する部位を定義し, その部位の形状を分類基準として, これまでに観察した畦畔の類型を整理し, 畦畔植物の資源学的および文化的意義を検討した。水田畦畔は, まえあぜ, あぜの平坦面, 畦畔草地の3部位から構成されると定義された。この3部位の有無, あぜ塗りの有無, あぜの上面の形態と管理状況から, 観察した畦畔は8型, 2亜型, 1移行型に分類された。関西型の畦畔には豊富な植物が見られるのに対して, あぜ塗りの面積の大きい畦畔では一年生草本が多かった。畦畔はそれ自身が観光資源となるだけでなく, 畦畔植物には, 食用や民間薬に使われる種が多く含まれ, 景観の美しさを作り上げる種やレクレーションに利用される種も含まれており, 畦畔植物の存在は土壌の流亡を防ぐだけではないことが示唆された。畦畔の管理にあたっては, 畦畔植物のもつ機能のどの要素を残すかの目標を明瞭にすべきである。