雑草研究
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球茎重に依存したカラスビシャクの繁殖様式
冨永 達中垣 明子
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1997 年 42 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

サトイモ科の多年生雑草カラスビシャク (Pinellia ternata (Thunb.) Breit.) は、種子、珠芽および球茎によって繁殖する (Fig. 1)。本研究では, 親球茎の重さと繁殖様式の関係を検討した。
1992年4月上旬に信州大学農学部構内の花壇からカラスビシャクの球茎250個を掘り取り, 個々の球茎の重量を測定した後, 野菜畑の土を詰めた直径11cm・深さ10cmの素焼き鉢に球茎を1個づつ植えた。生育期間中, 展開葉数, 花茎数, 珠芽数およびその重量を調査した。地上部が完全に枯死した10月下旬に親球茎を掘り取り, 重量を測定した。
カラスビシャクは, 4種類の葉身, 即ち, 心形の葉身, 基部がややくびれた葉身, 基部が深くくびれ左右の裂片葉が明らかな葉身, および完全に分離した3小葉からなる葉身を展開した。心形の葉身をもつ個体はほとんど繁殖器官を形成しなかったが, 基部がややくびれた葉身をもつ個体のほとんどは葉柄に珠芽を形成した。基部が深くくびれ, 左右の裂片葉が明らかな葉身をもつ個体はすべて葉柄と葉身の基部に珠芽を形成した。花茎を抽出した個体はすべて完全に分離した3小葉からなる葉身をもち, 植え付け時の親球茎の重さが0.79g以上の個体であった。展開葉数 (Fig. 3), 珠芽形成数 (Fig. 5), 珠芽重 (Fig. 6, 7) は球茎重が重くなるにつれ増加した。カラスビシャクの繁殖様式は, 親球茎の重さに大きく依存していることが推定された。

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