雑草研究
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生態型を異にするスズメノカタビラ (Poa annua L.) の Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) による防除効果
今泉 誠子藤森 嶺
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1997 年 42 巻 2 号 p. 125-134

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抄録

スズメノカタビラ用微生物防除剤である Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) の効果を, 生態型を異にする2種のスズメノカタビラを用いて試験した。一年生タイプとして栃木県の宇都宮産 (平野部に産生; Aタイプ) を, 多年生タイプとして群馬県の嬬恋産 (ゴルフ場に産生; Pタイプ) を形態的特徴および休眠性を指標として選抜した。それぞれについて, 3温度条件下 (25℃/20℃, 20℃/15℃, 15℃/10℃; 昼温/夜温) における X. campestris pv. poae (JT-P482) のスズメノカタビラ体内における増殖と効果 (無処理区に対する地上部生重の減少率で評価) を比較したところ, いずれの温度条件であっても菌の増殖パターンはAタイプとPタイプとの間に差はみられなかった。しかし効果に関しては, 25℃/20℃の比較的高温側では両生態型ともに同様の値を示したものの, 20℃/15℃, 15℃/10℃ではAタイプがPタイプよりもわずかに高い効果を示した。さらに両生態型スズメノカタビラ体内における菌の増殖および移行を, それぞれ1葉に接種を行った固体を用いて追跡したところ, Pタイプより新生する茎内で高濃度の菌が検出された以外は, 両者間に有意な差は認められなかった。しかし効果においてはPタイプが処理後6週目に約20%Aタイプを下回った。一方, 両生態型の無処理スズメノカタビラの生重および茎数 (2次分げつを含む) を比較したところ, Pタイプのスズメノカタビラは生重にして1.7倍, 茎数にして4.1倍Aタイプより高い値を示した。これらの事実から, JT-P482の効果がスズメノカタビラの生態型によって異なる現象は, 菌の増殖能によるものではなく, 植物体の成長の程度によるものであることが示唆された。

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