雑草研究
Online ISSN : 1882-4757
Print ISSN : 0372-798X
ISSN-L : 0372-798X
イマゾスルフロンによる植物のアセト乳酸合成酵素の阻害
田中 易吉川 治利
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 43 巻 4 号 p. 291-299

詳細
抄録

水耕栽培条件で, イネ (Oryza sativa, 品種; 日本晴) の2葉期に1~100ppbのイマゾスルフロンを処理すると、第3, 第4, 第5葉の伸長は30ppb以上で阻害され, 根部乾物重は最低濃度の1ppbから抑制された (Fig. 1)。30ppbのイマゾスルフロンにより抑制されたイネの第3葉の伸長は, 100ppmの3種の分岐鎖アミノ酸, バリン, イソロイシンおよびロイシンの添加によりほぼ完全に回復した (Fig. 2)。イマゾスルフロンはエンドウより調製したアセト乳酸合成酵素 (ALS; EC 4. 1. 3. 18) の活性を大きく阻害し (I50=24nM), 基質のピルビン酸との間には非拮抗阻害を (Fig. 4), コファクターのチアミンピロフォスフェート (TPP) との間には不拮抗阻害を示した (Fig. 5)。イマゾスルフロンによる阻害は経時的にゆっくりと増大し, 2相性を示した (Fif. 6)。また, 最終定常状態の阻害は初期状態の阻害よりも約20倍強かった (Fig. 6)。イマゾスルフロンに感受性の低いイネから調製したALSは, 調製前のイネの葉令および光の有無による栽培条件の違いに関係なく, イマゾスルフロンに高い感受性を示した (I50=14~45nM) (Table 1)。以上のことより次のことが示唆される。イマゾスルフロンは他のスルホニル尿素系の除草剤同様, 植物のバリン, イソロイシンおよびロイシン生合成系の最初のステップに関わっているALSに直接作用することにより, バリン, イソロイシンおよびロイシンの生合成を阻害する。本除草剤は slow-binding なALS阻害剤であり, そのALS結合部位はピルビン酸およびTPPの結合部位とは異なる。イネの葉令および光の有無による栽培条件の違いによるALSの本除草剤に対する感受性の差はほとんどなく, また, 本除草剤に対して感受性を示す他の植物種における本除草剤に対するALSの感受性と大差ないことから, イネ本来の感受性の低さとは関係ない。

著者関連情報
© 日本雑草学会
次の記事
feedback
Top