雑草研究
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水稲およびイヌビエ幼植物の根系の発達におよぼす生育環境の影響
小笠原 勝野崎 智仁竹内 安智近内 誠登
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1998 年 43 巻 4 号 p. 328-333

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抄録

生育環境としての土壌水分, 播種深度, 湛水深および地温を変えて, 根箱および円筒カラム内で育成した水稲 (品種, ホシノヒカリ) とイヌビエ根系の外部形態を画像解析により比較した。
(1) 水分条件; 畑および湛水条件下において, イヌビエの総根長, 総冠根長, 冠根数および根系のフラクタル次元は播種21日後から水稲を上回った。根系形態上のイヌビエと水稲の違いは, 冠根数よりも総根長とフラクタル次元で顕著であった。また, いずれの水分条件下においても, イヌビエ根系の伸長角度は水稲よりもわずかに小さかった。(2) 播種深度; イヌビエおよび水稲の総根長はそれぞれ0.5cmおよび1cmの播種深度で最も長く, 両者の総根長の違いは1cmの播種深度で最大であった。(3) 湛水深; イヌビエの総根長およびフラクタル次元は0.5cm水深区で水稲を上回ったが, 8cm水深区で逆に下回った。(4) 地温; イヌビエと水稲の根は24℃で最大であった。しかし, 15℃では, 水稲の根はほとんど伸長せず, イヌビエとの間に著しい差が生じた。以上の結果から, 土壌水分, 播種深度, 湛水深および地温を変えて育成した場合に, イヌビエの根系形態が直播水稲と異なることが判明した。また, 地温の低い条件や浅水条件, さらには水稲の播種深度が深く, イヌビエの発芽深度が浅い場合に, イヌビエの根の成長は水稲を上回り, このような生育環境において, 直播水稲とイヌビエ間の地下部における競合が顕著となることが示唆された。

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