雑草研究
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マグネシウム欠乏が抗酸化酵素活性誘導と活性酸素生成型除草剤に対する抵抗性増加に及ぼす影響
李 増周金 乗徹松本 宏臼井 健二
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1998 年 43 巻 4 号 p. 349-358

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抄録

有害な活性酸素種を生成する環境ストレスに対する植物の適応過程を把握するための一環として, キュウリとツルナシインゲンマメをマグネシウム (Mg2+) 欠乏の水耕液で栽培した時に発現するクロロフィル含量とMg2+濃度の変化, 抗酸化酵素の活性変動などを調べた。また, ツルナシインゲンマメの活性酸素生成型除草剤パラコートとオキシフルオルフェンに対する抵抗性に及ぼすMg2+欠乏の影響についても検討した。
Mg2+が充分に供給された水耕液で栽培されたキュウリとツルナシインゲンマメでは初生葉のMg2+含量が増加したが, Mg2+欠乏で栽培された植物では顕著に減少した (Fig. 1)。Mg2+欠乏は, ツルナシインゲンマメよりキュウリにおいて, クロロフィルおよび蛋白質含量を著しく減少させた (Figs. 2, 3)。また,Mg2+の欠乏によってキュウリではアスコルビン酸ペルオキシダーゼ (AP), グルタチオンレダクターゼ (GR) ならびにスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) が, ツルナシインゲンマメではAPおよびSODの活性が著しく高くなることが判明した (Fig. 4)。
ツルナシインゲンマメは活性酸素を生成する作用があるパラコートとオキシフルオルフェンに対し感受性を示したが, Mg2+欠乏条件下で育成した植物はクロロシスと水分損失率が少なく, 両薬剤により抵抗性になることが明らかになった (Figs. 5, 6)。これらの結果から, Mg2+の欠乏が供試植物種において, 有害な活性酸素種を消去する作用がある抗酸化酵素活性を促進する作用があることが示され, また, ツルナシインゲンマメではAPとSOD活性の増加が, 活性酸素種を生成する除草剤に対する植物の抵抗性を高めた一つの原因になっているものと推察される。

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