雑草研究
Online ISSN : 1882-4757
Print ISSN : 0372-798X
ISSN-L : 0372-798X
クログワイの塊茎形成過程における異なる遮光時期が塊茎生産に及ぼす影響
稲村 達也山本 卓司吉田 弘杉山 高世西尾 和明
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 46 巻 4 号 p. 273-281

詳細
抄録

著者らは, 除草剤処理や遮光処理によるクログワイ(Eleocharis kurogumi Ohwi) の塊茎形成期間における吸収日射量の抑制による同化産物の供給制限が塊茎生産量の顕著な抑制をもたらすことを明らかにしてきた。同化産物の供給制限に基づいたクログワイの実用的な防除法を確立するためには, 塊茎生産量を最も効果的に抑制できる同化産物の供給制限法を明らかにする必要がある。
本試験では, クログワイが自然発生する水田において水稲とクログワイとの混植群落を対象に, 塊茎形成期間の4時期に対してそれぞれ遮光処理 (75%遮光) を行なった。処理により塊茎形成期間におけるクログワイ群落の吸収日射量を制御し, その同化産物の供給を人為的に変化させることで塊茎生産量を抑制した。そして, 塊茎形成期間における吸収日射量と地上部生育並びに塊茎生産量との関係を解析した。
処理区では, 遮光処理を取り除いた後の非遮光期間においても同化器官である茎表面積の抑制が続き, 遮光処理が早い処理区ほど塊茎形成期間の吸収日射量の低下が顕著であった。4時期の遮光処理のなかで, 塊茎形成初期 (塊茎形成始期から15日間) の遮光処理による塊茎生産の抑制効果が最も顕著であった。そして, 塊茎形成初期における遮光処理は, 塊茎生産をほぼ最小化しており, クログワイの塊茎増殖の抑制効果を期待できる水準まで塊茎生産量を抑制していたと推察された。
一方, 塊茎生産量は塊茎形成過程における全期間の吸収日射量に支配され, その中でもとくに塊茎形成初期の吸収日射量に影響されることから, 塊茎形成初期における塊茎への同化産物の供給不足による塊茎の乾物蓄積能力の低下やこれによる塊茎の早期発育停止の可能性が示唆された。今後, 塊茎形成初期における遮光処理の期間と強度が塊茎生産に及ぼす影響を詳細に検討するには, 遮光処理を取り除いた後の同化産物供給量の変化を明らかにすることが重要である。この場合, 遮光解除後の吸収日射量の利用効率や同化産物の分配率の変化や同化産物の供給再開にともなう塊茎の新たな分化と再肥大について検討することが必要と考えられた。

著者関連情報
© 日本雑草学会
前の記事 次の記事
feedback
Top