抄録
タコノアシは準絶滅危惧種に指定されている湿生植物である.本種の生育地復元の基礎情報とするため,植物群落調査と植栽試験を行い,水位の違いと競争種の有無が成長・繁殖に与える影響を調査した.植物群落調査の結果,水面からの比高が0 ~ 20cm の,水位変動の大きいコドラートにおいてタコノアシの常在度と相対優占度が高かった.また植栽試験を行った結果,比高0cm 区および20cm 区は,40cm 区のものに比べて基部径と草丈の成長量ならびにさく果形成数が大きかった.40cm 区では競争種を除去した場合でもさく果形成数が少なく,また競争種を残した場合では,多年生高茎草本の被圧により個体の成長と実生の定着が阻害された.これらの結果から,本種の成長・繁殖に適した立地は,水位変動による攪乱が起こり,競争種である多年生高茎草本の成長が抑制されやすい比高0-20cm の水際部であることが明らかにされた.