抄録
近年,ディジタルコンテンツの不正コピーによる著作権侵害が問題となっている.このような問題の対策の1つとして,電子透かし技術の研究が行われている.電子透かしは,透かしが埋め込まれた合成画像からもとの原画像に復元することが可能な可逆電子透かしと,もとの原画像に完全には復元できない非可逆電子透かしとがある.非可逆電子透かしは,医用目的等ある種のアプリケーションに対しては利用できない場合がある.そこで,本研究では,合成画像から原画像に復元可能な可逆電子透かし方式を提案する.本方式では,ウェーブレット変換係数をペアにして1つのベクトルとして扱い,1ビットの透かし情報を埋め込む.このとき,埋め込み前後のベクトルを1対1に対応させることで,原画像復元を可能とした.透かしの耐性について,先に筆者らが提案した非可逆の電子透かし法と比較し,本方式は可逆であることに加えて,耐性の面についても有効であることを示す.