共催: 画像電子学会, 社団法人 映像情報メディア学会
圧縮符号化を伴うカラー動画像伝送システムにおいて,高い色再現性を維持した伝送を実現しようとする場合,主観的に劣化を知覚させない程度の適切な圧縮率の設定が必要となる.そこでは,色再現性を含めた画質に関して,主観的な評価との相関性が高い客観的評価尺度が求められる.本研究では,近年利用が広がりつつあるH.264/AVCを対象とし,色再現性の観点から,CIELAB色差および,その改良版であるS-CIELAB色差を取り上げる.まず,圧縮画像の各フレームにS-CIELABを適用したところ,CIELABよりも相関性が向上する結果が得られたものの,十分とはいえないものであった.そこで次に,H.264/AVCによる劣化が主に濃淡分布の平坦な領域で知覚されるという被験者のコメントに基づき,色差算出領域をフレーム内の平坦部分に制限する工夫を行うことにより,さらに主観評価との相関性が向上する結果を得ることができた.