主催: 画像電子学会
本稿ではフラクタルモデルの画像識別能力を増強する目的で考案した、フラクタル行列モデル、及び、そのパラメータ推定について述べ、画像識別能力について検討した。フラクタルは画像の生成、解析、識別と様々に利用されるが、識別に関してはその能力は強くない。これはもともとが二次元情報である画像をフラクタル次元という一つの数値で表現することに起因する。このことに鑑み、本稿では二次元フラクタルモデルであるフラクタル行列で画像面の振幅の乱れを表現する。ここでフラクタル行列はエルミート行列であると仮定し、その対角要素は各座標軸方向の、非対角成分は座標軸間のフラクタル性の相関を表現する。画像が与えられた場合、対応するフラクタル行列は最小自乗法により推定できる。テクスチャ画像に対してフラクタル行列を求め、それをもとに、画像解析及び識別実験を行った。実験の結果、通常のボックス次元よりはるかに強い画像識別能力が実現でき、本モデルの有効性が確認できた。