抄録
ある物体が「食べられる物であるか否か」は動物の生命維持に不可欠な本能的判断であり、人も「おいしそうか」といった点で視覚的に瞬時に判断していると考えられる。本研究では、人は食品知覚のため食品物体に関する反射特性データベースを脳内に所持し、鏡面反射により生じるハイライト部分からこの反射率を自動推定し「食べられる物であるか」を瞬時判定しているという仮説を立てる。視線追跡実験を通じて、この仮説の正当性を実証する。実験の結果、同一画像の評価でも食品と関係のない評価より、「おいしそうか」という食品としての評価の方がハイライトを注視しており、人の食品知覚のための反射特性データベース所持の可能性が示唆された。