抄録
本論文では,水の中で拡散する墨汁の運動を制御可能とするシミュレーション手法を提案する.本手法では,水の中で拡散する墨汁の流体計算を2 次元非圧縮流体方程式に基づいてグリッドベースでモデル化し,Kolmogorov spectrum を利用して 3 次元流体場に拡張する.そして,墨汁の拡散現象を利用して意図した形状を表現したい場合,アニメータは拡散現象を制御したい形状をあらかじめ用意し(これをターゲットシェイプと呼ぶ),3次元流体場の内部で定義する.ターゲットシェイプが定義された3次元流体場においては,流体場にしたがってボクセル1つ分に相当する大きさのパーティクルをターゲットシェイプ内で運動させ,パーティクルとターゲットシェイプの衝突判定を行う.すなわち,パーティクルの運動軌跡にしたがって3次元流体場を更新するものとする.これにより,ターゲットシェイプ内で新しい3次元流体場を生成することが可能となり,アニメータが意図した形状内で墨汁の拡散現象を表現することが可能となる.