西部造船会々報
第108回西部造船会例会(西部造船会々報 第108号)
会議情報

圧電フィルムを用いた応力分布測定テープ
田中 幸子Yue JingxiaLiu GangIm Eunsang新宅 英司*藤本 由紀夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 000008

詳細
抄録

船舶や海洋構造物の応力測定には歪ゲージが多く用いられるが,任意の線上の応力分布を測定する場合には,多数の歪ゲージを接着する必要があるので接着作業や配線作業が大変である。数枚の歪ゲージを直列に配置した応力集中ゲージもあるが,市販の応力集中ゲージは数点の歪測定用である。ところで,構造物に接着するテープ状の応力分布測定テープがあって,構造物の所定の線上あるいは曲線上に接着して,その線上の応力分布を測定できれば,局部応力分布を把握するのに便利である。また,対象部位を囲むように応力分布測定テープを接着して,対象部位の境界部に沿って連続的に応力分布を測定できれば,全体構造解析で検討困難な組立精度,溶接変形,残留応力の影響を含めた局部応力状態を検討することができる。そこで本研究では,高分子圧電フィルム(PVDF)を用いた応力分布測定テープを試作し,切欠材および亀裂試験片に適用してその有効性を検討した。 PVDFは極薄く柔軟な高分子圧電フィルムである。これを部材に接着するとその表面に部材歪に比例する電位Vを生じる。また,PVDFの異方性の向きを0度,45度,90度に変化させて3枚接着すると部材表面の歪成分を全て決定できる。試作した応力分布測定テープは,3枚のPVDF片(幅5mm,長さ2.5mmの長方形)を0.75mmの間隔で異方性の向きを0度,45度,90度に変化させて配置し,これを6回繰り返して直線上に配置したものである。すなわち18カ所の電位測定点を有する。これらを絶縁材料のテープに貼付けたものを構造部材に接着して使用する。絶縁テープにはポリイミドを使用した。ポリイミドテープには各PVDF片の中央部に相当する位置に穴加工を施し,この穴から表面電位を測定するようにした。PVDFの表面電位測定には表面電位計を使用した。通常の電位測定法ではプローブの測定スポットよりも微小なPVDF片の電位を精度良く測定できない。このため本研究では,プローブ先端に画鋲形状電極を取付けて電位測定を行う方法を採用した。画鋲形状電極はプローブと微小間隔を介して対向する位置に配置した画鋲形状電極の先端部に微小な導電ゴムを取り付け,導電ゴムの底面をPVDFに接触させて,PVDFの電位を静電誘導によって頭部の円盤に伝えて電位を測定する。接触方式で測定するのでプローブとPVDFの間隔を保つ固定具が不要になるとともに微小領域の表面電位が測定可能になる。次に,応力分布測定テープを用いた応力分布測定実験を行った。軟鋼の切欠付き平板と亀裂付き平板に、切欠き部又は亀裂部を囲むように3本又は2本の応力分布測定テープを接着し,これを油圧サーボ試験機に取り付けて,1Hz,正弦波,完全両振り荷重を繰り返し負荷した。試験中に画鋲形状電極を取り付けたプローブでPVDFの表面電位変動を計測し,測定した電位変動から各テープ線上の応力分布を求め,その結果をFE解析で求めた応力分布と比較した。その結果,実験で求めた応力分布は有限要素法解析で求めた応力分布と良く一致した。

著者関連情報
© 2004 公益社団法人日本船舶海洋工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top