廃棄物学会誌
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水銀の排出インベントリーと環境排出
貴田 晶子酒井 伸一
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2005 年 16 巻 4 号 p. 191-203

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抄録

水銀の大気排出量に関して, 世界, アメリカおよびイギリスのインベントリーを概説し, 日本における水銀の排出量の推定を行った。すべてではないが, 主要な熱処理過程について排出係数と活動量を求めた。ラフな推定値として年間19~35tonを得た。一般に石炭燃焼および一般廃棄物燃焼が主な水銀の発生源とされるが, 日本ではそれぞれ, 年間0.6~1.5tonおよび0.3~1.8tonで寄与は大きくないと考えられる。それは石炭および一般廃棄物中の水銀濃度が欧米に比べ低いことが主な原因である。主な発生源としては医療廃棄物10~20tonがあげられる。下水汚泥焼却, セメント製造, シュレッダーダスト焼却などは石炭燃焼および一般廃棄物焼却からの発生量とほぼ同等であると考えられる。人口に対する排出量は0.15~0.28g/人/年であり, イギリスの0.15g/人/年, アメリカの0.56g/人/年の中間の値であった。ただし, この推定は予備的なものであり, 報告例の少ないカテゴリーの排出係数を求めるために実測値が必要である。日本の特殊性として, 産業廃棄物の燃焼が多いこと, 鉄鋼や非鉄金属精錬への廃棄物の有効利用が増加していることから, リサイクルの促進とともに, 大気環境への排出量に対する配慮が必要と考えられる。

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© 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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