抄録
1982年に揮発性有機化合物による広範囲の地下水汚染が発見されてから, 10年経って水道水の水質基準が大幅に改訂され, また, 水質環境基準, 排水の排出基準, 土壌環境基準, 特別管理産業廃棄物, 埋立て処分や海洋投入処分の安全性判定基準にも揮発性有機化合物が定められ, 大気汚染対策も検討されている。このように, 揮発性有機化合物は, 大気, 水質, 土壌・底質といった一つの環境コンパートメントを汚染するだけでなく, 相互の間を移動して環境全体を汚染 (マルチコンパートメント汚染) している。そこで, 環境汚染を起こしている揮発性有機化合物の物性や発生源等を概説し, 環境中での挙動を予測するモデルを紹介してから, それらによる大気汚染, 水質汚濁, 土壌汚染について, 測定方法, 汚染実態および対策技術と相互の関係をまとめ, さらに, それらを含む廃棄物の種類, 試験方法および処理方法について述べた。