女性学
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ジェンダー平等が達成されたと思わされている社会機構はなにか
近本 聡子
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2022 年 29 巻 p. 38-51

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抄録

 かつて、一部は消費者女性みずからの、また多くは社会運動をしていた男性たちのビジネスモデルとして発展してきた、生活協同組合運動(活動)。だが英国の女性消費者運動が「買い物は投票行動」というスタンスで企業と対峙したのに対し、日本は「安全・安心な食べ物」を調達・商品開発に特化していった。

 2000年代になり貧困層を除き食ニーズが達成された後、消費者運動も消沈気味、かつ安全性も生協独自基準で厳しい選別をする生協は、数少ない。女性組合員が95%弱を占め、2000万人以上の組合員が日常の買い物をする組織だが、性別役割分担をみると、男性稼ぎ手モデルが少し崩壊している動きが見えるのは2018年調査くらいから、若年層に限定的に、である。2015年の全国組合員調査では、食事のマネジメントを担うのは9割女性であった(回答者女性自身のみ)。30年この構造はほぼ変わらず、職場でのジェンダー平等への改善が先行しているのではと考えている。

 「主婦」ではないが、食事マネジメントを一手に引き受けている母親たちは、ワンオペ育児から解放されていない。コロナ禍で、再び女性の「食べさせる」というケア労働量が強化され、職業生活に影響が出ている。日本の家族内でジェンダー平等が達成されたなど考えられない。かつて、いわゆる「女なみ平等」をめざす運動の代表であった生協組合員によるワーカーズ・コレクティブなどの仕事起こし運動が、労働者協同組合法成立(2020年)によって男女ともに「地域で役に立つ」仕事づくり運動になろうとしている。

 「ポストフェミニズム的状況」の代表的なものは、あいも変わらず「家族」と自助的労働を強化する「働く場」の身分制度ではないか。未婚率上昇は、差別回避最終手段に思える。

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