女性学
Online ISSN : 2436-5084
Print ISSN : 1343-697X
特集
女性学からジェンダー研究へ:制度化への道
上野 千鶴子
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 32 巻 p. 12-25

詳細
抄録

 女性学はパイオニア世代の引退に伴って、世代交替の時期を迎えている。本論文では女性学・ジェンダー研究の歴史をたどりながら、担い手の世代交替とその効果を論じる。女性学はウーマンリブを契機として、キャンパスの外で民間学として始まった。井上輝子が女性学を「女性の・女性による・女性のための研究」と定義したことは、国内で物議を醸した。その後、女性学は女性センター、公民館などの社会教育の場と共に、大学での自主講座、総合講座を経て、学問の分野で市民権を獲得するようになった。その後男性学も誕生し、さらにジェンダー概念が精錬されることによって、より領域横断的な「ジェンダー研究」へと発展するようになった。その過程で大学にも「ジェンダー・セクシュアリティ」を主題とする専門課程が生まれ、講義やゼミが開講され、アカデミアにおける知的再生産のサイクルのうちに制度化されるようになった。わずかとはいえポストがつき、科研費のうちにジェンダー細目が設置され、研究者の養成が可能になった。

 パイオニア世代は運動と接点を持っており、女性学とフェミニズムは車の両輪と考えてきたが、第二世代は学知の再生産の制度のもとで研究者として自己形成をしてきた。さらに第三世代は当事者性にもとづいたアクティビズムとの接点と持つようになった。ジェンダーが領域横断的な概念としてあらゆる学問分野で主流化されるかどうかは今後の課題である。

著者関連情報
© 2025 日本女性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top