X線分析の進歩
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原著論文
蛍光X線透視分析装置による汚染土壌分析
丸茂 克美小野木 有佳大塚 晴美細川 好則
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2011 年 42 巻 p. 153-165

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抄録

汚染土壌中の鉛の存在形態を判定するため,蛍光X線透視分析装置を用いて汚染土壌の観察と分析を実施した.鉛を使用していた工場跡地の土壌のうち,鉛の公定法含有量が15,000 mg/kg,公定法溶出量が4,800 μg/Lに達する汚染土壌には,マンガン,鉄,銅,亜鉛を含有する物質の存在が確認された.こうした物質のX線透視像はX線管球電圧が40 kVで消滅することから,土壌中の鉛は銅や亜鉛とともにマンガン酸化物や水酸化物などに吸着されたものであり,鉛は容易に溶出してしまうと考えられる.一方,公定法含有量が6,900 mg/kg,公定法鉛溶出量が3.5 μg/Lの汚染土壌を蛍光X線透分析装置で調べた結果,X線管球電圧が50 kVに設定してもX線透視像が消滅しない鉛を主成分とする粒子が確認された.こうした粒子はリン酸塩や炭酸塩のような鉛化合物であり,鉛が溶出し難いと考えられる.

蛍光X線透視分析装置を用いて自然起源の砒素汚染土壌中の砒素の存在形態を調べた結果,土壌粒子の粒子径と輝度との関係や蛍光X線分析結果から,公定法砒素含有量210 mg/kg,公定法砒素溶出量41 μg/Lの土壌中には硫砒鉄鉱が含まれることが明らかにされた.一方,公定法砒素含有量210 mg/kg,公定法砒素溶出量が5 μg/Lの土壌中には鉄酸化水酸化硫酸塩鉱物のシュベルトマナイト(Fe8O8(OH)6-2x(SO4)X)が含まれることが明らかにされた.シュベルトマナイトは硫酸イオンのサイトに砒素を固定できる二次鉱物であるため,土壌中の砒素含有量が高いにも関わらず,砒素の溶出量は極めて小さいと考えられる.

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© 2011 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
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