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澤 龍, 中江 保一, 森川 悠佑, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
111-114
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線検出器を追加して微小部の元素分析を行なう分析装置は広く用いられている.EDXでは最近はシリコンドリフト検出器を用いることが多くなった.シリコンドリフト検出器ではデジタル・シグナル・プロセッサをブラックボックスとして用いてX線スペクトルを測定する.しかし,オーディオ用の安価なアンプを流用し,自分でプログラミングしたデジタル信号処理ソフトウェアを使っても十分に分析に耐えうるスペクトルが得られ,より簡単に測定できることを報告する.
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永井 宏樹, 中嶋 佳秀, 国村 伸祐, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
115-123
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
数ワットの小型X線管から発生する非単色X線を利用したポータブル全反射蛍光X線装置にSDDを採用し,高感度化を行った.従来,ポータブル全反射蛍光X線装置の検出器にはSi-PIN検出器を使用していたが,SDDを搭載する事で,PB比の向上,軽元素の分析感度の向上を図ることが出来た.本報告では,SDDによる感度比較,X線導波路の評価,点滴サポート冶具を用いた定量性の改善,応用事例について報告する.
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岩田 明彦, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
125-139
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
2種類の異なった色合いの合金からできた硬貨(バイカラー硬貨,Bi-colour coin)は,その色調や質感に似通ったものが多く,多くの硬貨が類似の合金を使用していると思われる.代表的なバイカラー硬貨であるユーロ硬貨は異なった国々で製造されているが,EUの統一された規格のもとに製造され当然その元素組成も規定されている.
近年,ハンドヘルド型のエネルギー分散型蛍光X線装置(ED-XRF)の普及により,金属種や合金種の判別は容易に行えるようになったが,同じ種類の合金の産地判別などの試みは行われていない.今回,波長分散型蛍光X線分析法(WD-XRD)を用い,これらの類似したバイカラー硬貨と,統一された規格に従い異なった国で製造されたユーロ硬貨について,製造国の判別が可能であるかの検証を行った.
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永吉 勉, 田口 武慶, 谷森 達, 窪 秀利, Joseph Don Parker, 山本 潤, 高西 陽一
2011 年 42 巻 p.
141-152
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
マイクロパターンガス検出器は微細な電極構造を持つ検出器で,位置分解能などワイヤーチェンバーの限界を克服できる.Micro Pixel Chamber(μ-PIC)は,京都大学で開発された新しいマイクロパターンガス検出器で,現在ではX線結晶解析のほか,主に素粒子・原子核物理学を中心に広く応用の研究が進んでいる.今回,このμ-PICを小角散乱などX線分析へ応用することを前提に評価実験を行った.この実験で約3000のガス増幅率,200 kcpsまでの計数の線形性が得られた.また,斜め入射に対する評価実験,コラーゲンなどの小角散乱実験を行い,イメージング性能を実証した.
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丸茂 克美, 小野木 有佳, 大塚 晴美, 細川 好則
2011 年 42 巻 p.
153-165
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
汚染土壌中の鉛の存在形態を判定するため,蛍光X線透視分析装置を用いて汚染土壌の観察と分析を実施した.鉛を使用していた工場跡地の土壌のうち,鉛の公定法含有量が15,000 mg/kg,公定法溶出量が4,800 μg/Lに達する汚染土壌には,マンガン,鉄,銅,亜鉛を含有する物質の存在が確認された.こうした物質のX線透視像はX線管球電圧が40 kVで消滅することから,土壌中の鉛は銅や亜鉛とともにマンガン酸化物や水酸化物などに吸着されたものであり,鉛は容易に溶出してしまうと考えられる.一方,公定法含有量が6,900 mg/kg,公定法鉛溶出量が3.5 μg/Lの汚染土壌を蛍光X線透分析装置で調べた結果,X線管球電圧が50 kVに設定してもX線透視像が消滅しない鉛を主成分とする粒子が確認された.こうした粒子はリン酸塩や炭酸塩のような鉛化合物であり,鉛が溶出し難いと考えられる.
蛍光X線透視分析装置を用いて自然起源の砒素汚染土壌中の砒素の存在形態を調べた結果,土壌粒子の粒子径と輝度との関係や蛍光X線分析結果から,公定法砒素含有量210 mg/kg,公定法砒素溶出量41 μg/Lの土壌中には硫砒鉄鉱が含まれることが明らかにされた.一方,公定法砒素含有量210 mg/kg,公定法砒素溶出量が5 μg/Lの土壌中には鉄酸化水酸化硫酸塩鉱物のシュベルトマナイト(Fe8O8(OH)6-2x(SO4)X)が含まれることが明らかにされた.シュベルトマナイトは硫酸イオンのサイトに砒素を固定できる二次鉱物であるため,土壌中の砒素含有量が高いにも関わらず,砒素の溶出量は極めて小さいと考えられる.
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荒木 淑絵, 山下 博樹, 寺田 慎一
2011 年 42 巻 p.
167-173
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
エネルギー分散型蛍光X線分析においては,様々な元素を含有する試料から複数のピークが検出することが可能であるが,それらが重なることにより正確な定量分析がしばしば困難である問題があった.本報告では,これら従来の手法の問題点に鑑みて,ファンダメンタルパラメータ法をピーク分離法に有機的に組み合わせることにより,分析精度を向上させることを検討した.
まず,得られたピークプロファイルに対し,仮の元素内ピーク比を用いてピーク分離を行い,ピークの積分強度を算出した.次に,その分離した強度を用いて定量計算を行った後,算出した定量値を用いて元素内ピーク比を計算し仮のピーク比を補正した.元素内ピーク比の算出にはファンダメンタルパラメータ法を用いた.
真鍮,銀-パラジウム合金,金合金,スズ合金を用いてピーク分離検証をし,本方法を用いることでピーク分離を精密化できることが分かった.この手法によりより正確な蛍光X線分析における含有元素の定量が可能であると考えられる.
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井上 稔, 山田 康治郎, 北村 真央, 後藤 規文
2011 年 42 巻 p.
175-181
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
生石灰中の成分の定量分析において波長分散型蛍光X線分析法を用いて,粉末ブリケット法によるCO2(二酸化炭素)の分析について,最適な測定条件の検討を行った.また生石灰中の強熱減量についても同じ粉末ブリケット法でコンプトン散乱線強度を使用することより実用的な分析正確さが得られることが分った.この強熱減量の分析で共存元素によるマトリックス補正を行うことが有効である.
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岡本 芳浩, 塩飽 秀啓, 鈴木 伸一, 矢板 毅
2011 年 42 巻 p.
183-195
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
イオンチェンバーの代わりにX線CCDカメラを使用し,そこから得られた画像の濃淡を数値化することにより,位置分解能を兼ね備えたX線吸収微細構造(XAFS)測定を試みた.これは,通常の透過法によるXAFS測定レイアウトのうち,試料の下流側に設置されるイオンチェンバーをダイレクト型のX線CCDカメラに置き換えることに相当する.エネルギーを走査させながらCCDカメラの画像を動画として記録することにより,XAFS測定範囲に対応する映像を得た.各エネルギーにおけるX線透過強度は,CCDカメラの動画からフレーム抽出した画像の濃淡解析によって得た.CCDカメラによる画像は,約30万のピクセルからなっており,その任意の領域の解析を行うことで,X線強度に「位置分解能」を持たせることが可能になった.得られたXAFSデータは,EXAFS関数の振幅が過小に導出されるなど,定量的な解析において精度面で若干の問題を残したものの,定性的な分析には十分に耐えうるものであった.
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林 久史, 青木 敏美, 小川 敦子, 小村 紗世, 金井 典子, 片桐 美奈子
2011 年 42 巻 p.
197-206
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
ゾルゲル過程で形成される種々の金属酸化物,TiO2,V2O5,Fe2O3/SiO2のTi Kβ,V Kβ,Fe Kβスペクトルを実験室用・波長分散型X線分光器で測定した.焼成した試料のスペクトルは,通常の酸化物と大きな違いはなかったが,焼成前の乾燥ゲルや湿潤ゲルのスペクトルには,Kβ'やKβ”領域に10%程度の有意な強度差が見られた.Fe濃度が2 mol %以下のFe2O3/SiO2系では,ゾルの調製条件がKβの強度に影響することがわかった.これらの結果に基づいて,Kβサテライトスペクトルのゲル評価への応用可能性を議論した.
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山本 英喜, 原田 雅章
2011 年 42 巻 p.
207-212
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
寒天電解質を使用して電気分解を行い,電気分解終了後,陽極から溶出した金属の動きを蛍光X線イメージングにより観察した.その結果,陽極から溶出した金属が陽極から一定の距離のところに析出する現象が見られた.この原因を調べるために,様々な条件下で電気分解を行い,蛍光X線イメージングにより分析するとともに,寒天電解質中でのイオンの移動速度について比較検討を行った.
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岩瀨 元希, 藤尾 侑輝, 長濱 俊, 山田 啓二, 栗崎 敏, 脇田 久伸
2011 年 42 巻 p.
213-219
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
Ti-P結合を持つリン化合物と酸化チタン前駆体を混合して焼成する方法で,アニオン性リンを組み込んだ新規リンドープ酸化チタンを合成することを試みた.得られたリンドープ酸化チタンはリンの量によりうすい黄色~灰色をしており,紫外光及び可視光でフェノールの光触媒分解反応を示した.XRDの結果から,試料は主にアナターゼ結晶であることが分かった.さらに,XPS測定から,酸化チタンのごく表面のリンがリン酸の状態であることが示された.新規リンドープ酸化チタンのX線分析のデータと光触媒分解反応量との相関関係を考察することより,その特性が明らかとなった.
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飯島 善時, 成瀬 幹夫, 境 悠治, 平岡 賢三
2011 年 42 巻 p.
221-228
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
帯電液滴クラスター([(H2O)90,000+100H]100+)照射した高分子材料の表面の組成および化学結合状態は変化しない特徴を有することから,XPSの深さ方向分析に有効である.しかし,エッチングされた表面荒さは材料間で異なっている.PET,PS,PMMAおよびPVCのエッチングにともなうAFM観察された表面荒さとそれぞれのC 1sスペクトルのCHピーク形状との間に相関が観測された.PETとPMMAとでは帯電液滴の衝撃時の衝撃波による分子鎖の変化が異なっていることが判明した.
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松島 朋裕, 臼井 幸夫
2011 年 42 巻 p.
229-235
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
スラブや厚鋼板の中心偏析の高精度な定量評価を達成するために,EPMAを用いたMnの定量マッピングにおける検量線法の正確さを検討した.析出物形成元素であるC,Sを低減したMn分布の均一性が良好なFe-Mn 2元系合金を作製し,検量線の正確さσdを評価した.2元系合金での点測定においてσdは0.004 mass %で,Standard Reference Material(SRM)試料の面測定でのσd 0.010 mass %より良好な精度であった.検量線を作成するための1試料当たりの測定時間は,2元系合金の点測定によりSRM試料の面測定での200秒から,25秒へと大幅に短縮した.Mnを1.9 mass %含む鋼片の凝固組織の3回繰り返し測定で,Mn濃度が2.2 mass %以上の面積のばらつきは,SRM試料の面測定での2.0 %から,2元系合金の点測定により0.5 %以下に減少した.
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山本 孝, 菊池 淳, 岡田 咲紀, 山下 和秀, 佐田 知沙, 今井 昭二, 三好 徳和, 和田 眞
2011 年 42 巻 p.
237-248
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
α-メチルスチレン二量化反応に活性を示す鉄ゾル-ゲル法にて調製した鉄シリカ触媒をX線回折およびX線吸収分光法により評価した.触媒中鉄種の存在状態は仕込みSi/Fe比に依存し,100以上では四面体FeOxCl4-x種,50以下ではα-Fe2O3凝集種が主成分であり,その存在比をXANES解析により求めた.シリカマトリクスに捕捉された孤立FeOxCl4-xが活性種として機能し,固体酸性質を発現する機構について論じた.
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中江 保一, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
249-253
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
焦電結晶を用いたX線源は乾電池1個でも使用できポータブルな蛍光X線分析装置のX線源に適している.しかしながら,管電圧,管電流が不安定であるというデメリットがある.本研究では特に管電流の安定化のための基礎的な研究としてLiTaO3焦電結晶にタングステンの針(走査電子顕微鏡の探針)を取り付けて電界イオン化及び電界放射を行った.電界放出の際に電子電流がバースト状に放出される現象を発見した.
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中江 保一, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
255-259
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
波高分析装置やDSP(digital signal processor)を用いることなく,音声用に市販されているA/DコンバータをSDD(silicon drift detector)及びCdTe検出器と共に使用し,X線スペクトルの測定を行った.電磁シールドされた音声用A/Dコンバータをコンピュータに内蔵された音声用A/Dコンバータの代わりに使用することで,ノイズの主な原因であるコンピュータのメインボードからの回路ノイズが遮断され,エネルギー分解能に3倍以上の向上が見られることが分かった.
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Deh Ping TEE, 河合 潤
2011 年 42 巻 p.
261-266
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
ハンディー全反射蛍光X線分析装置を用いて異なる国から5つの市販ボトルミネラルウォーターと水道水を分析した.それぞれの乾燥残渣はピペットにて10 μLの体積を取って乾燥することによって準備した.市販ミネラルウォーターのラベルの認証農度は数十ppbから数百ppmというオーダーである.市販ミネラルウォーターには,ラベルに記載されたとおりにCa,K,Vを検出できた.一方,水道水には,K,Ca,S,Cl,Znが検出された.このような高感度のハンディー全反射蛍光X線分析装置によって大型分光器による正確な分析を行う前の迅速な測定が可能になることが期待される.
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村松 康司, Eric M. GULLIKSON
2011 年 42 巻 p.
267-272
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
代表的な黒鉛系炭素である高配向性熱分解黒鉛(HOPG)とカーボンナノチューブ(CNT)およびカーボンブラック(CB)の標準的なCK端XANESを取得するため,配向構造の影響をキャンセルできるマジックアングル下で高分解能CK端XANESを測定した.斜入射角θのマジックアングルは,配向性のHOPG と無配向性のCNTおよびCBのCK端XANESの斜入射角依存性を比較することにより,θ~55°であることを実測した.マジックアングル下のCK端XNNESにおいて,HOPG,CNT,CBのπ*/σ* ピーク高比はほぼ同一であり,このことはいずれも炭素六角網面構造から構成されることを意味する.しかし,HOPGに比べてCNTとCBののπ* ピーク幅は広がり,π*~σ* ピーク間の成分が高くなる.これは炭素六角網面における末端炭素または非ベンゼノイド構造に由来するπ電子構造の変化に起因すると考えられる.
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村松 康司, 久保田 雄基, 玉谷 幸代, Eric M. GULLIKSON
2011 年 42 巻 p.
273-280
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
液体有機化合物の簡便なX線吸収端構造(XANES)測定を目指し,インジウム基板に塗布した9種類の液体有機化合物(Isoprene, 2,6-dimethyl-2,4,6-octatriene, Geraniol, Farnesol, Squalene, Geranylacetone, (-)-Citronellal, Hexadecylbenzene, Epoxy resin)について全電子収量XANESの直接測定を試みた.その結果,10-7 Torr台の真空下においてこれらのCK端XANESを測定するとともに,酸素官能基を有する化合物についてはOK端XANESも測定することができた.このような液体試料であれば,液体セルのような特別な測定系なしに全電子収量法でXANESを簡便に測定できることを明らかにした.
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栗崎 敏, 三木 祐典, 南 慧多, 横山 尚平, 國分 伸一郎, 岩瀨 元希, 迫川 泰幸, 松尾 修司, 脇田 久伸
2011 年 42 巻 p.
281-290
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
我々は実験室において50-150 eVの範囲で固体の超軟X線吸収スペクトル測定が可能な装置と九州シンクロトロン光研究センターのBL-12に接続し50-1500 eVの範囲で溶液中の軽金属の軟X線吸収スペクトル測定が可能な装置の開発を行った.前者の装置はレーザーならびに集光光学系,ターゲット,モノクロメーター,検出器と試料室の4つの部分で構成されている.我々はこの装置を用いてハロゲン化リチウムのLi-K XANESスペクトルの測定を行った.後者の装置は7種類の可動軸を有しており,試料を大気圧下で蛍光法によりX線吸収スペクトル測定が可能である.我々は種々の濃度の塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムの水溶液のNaおよびMg-K XANESスペクトルの測定を行った.測定の結果得られたXANESスペクトルはDV-Xα分子軌道法を用いて計算した理論スペクトルを用いて解析を行った.
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林 久史, 郷 えり子, 廣瀬 友理
2011 年 42 巻 p.
291-297
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
2種類の水生植物,ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)とオオカナダモ(Egeria densa)の葉について,ビームサイズ0.3×1 mm2のCu Kα線を用いて蛍光X線(XRF)測定を行った.水中で生きたまま測定した場合は,どちらのXRFスペクトルも時間変化しなかったが,切断した葉ではCa-場合によってはK,Fe,Mnも-のKαピーク強度の顕著な増大が観測された.この「切断効果」の原因として,植物内のイオン調整機構の損傷が示唆された.
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村岡 弘一, 粟津 正啓, 宇高 忠, 谷口 一雄
2011 年 42 巻 p.
299-306
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
エネルギー分散型蛍光X線分析装置は,迅速且つ再現性のある非破壊分析法として,有害重金属のスクリーニングに用いられている.測定試料の多様化が進む一方,検出感度はより高感度化が求められている.この要求に応えるために,50 Wの小型X線管,最適化されたフィルタ光学系そしてペルチェ冷却方式の半導体検出器を備えた小型,省力型のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を開発した.本報告では,食品中で注目されている米中カドミウムの高感度定量結果より,今後食の安全性の観点から強化されるカドミウム濃度について開発装置を用いた管理体制の提案を行う.また,本方式による硬X線元素の検出について,幾つかの技術要素をハード構成と共に紹介する.
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村松 康司, 大江 剛志, 小川 理絵, 西埜 誠, 大野 ひとみ, 内原 博, 衣川 良介
2011 年 42 巻 p.
307-313
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
「寛永通宝」における磁化率の分布を解明するため,蛍光X線分析により主要金属元素(Cu, Zn, Fe, S, Cl, Pb, As, Ca)の濃度分布を測定し,特にFeに注目して磁化率との相関を調べた.その結果,いずれの個体もCuとZnを主成分とする黄銅(銅亜鉛合金)からなることを確認した.また,FeとSの濃度が個体間で異なるものの,Feの濃度分布と磁化率分布との相関は確認できなかった.寛永通宝における磁化率は単純にFeの濃度では説明できない.
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小川 理絵, 越智 寛友, 西埜 誠, 市丸 直人, 大和 亮介
2011 年 42 巻 p.
315-324
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
少量の有機試料について,蛍光X線による定量分析を行った.分析法としてファンダメンタルパラメータ法を使用した.形状補正のために,連続散乱X線を用いて蛍光X線との強度比を計算する方法,及びRh Kαコンプトン散乱X線を用いて主成分の炭化水素を定量する方法を調べた.その結果,連続散乱X線は食品の様な低含有量の試料に,Rh Kαコンプトン散乱X線はポリ塩化ビニル樹脂の様な高含有量の試料に適していることが判った.これら2つの方法は,Rh Kαコンプトン散乱X線とRh Kαレイリー散乱X線の測定強度比を計算すれば,一定の値を境にして使い分けできることも示した.
更に検討を進めたところ,Rh Kαコンプトン散乱X線とRh Kαレイリー散乱X線の強度比は,前述の使い分けだけではなく,形状補正にも使えることが判明した.この方法による定量値はややばらつく可能性があるが,高含有量,低含有量のいずれにも使用できるので,少量の有機試料の分析には有効であると考える.
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権代 紘志, 阿部 善也, 中井 泉
2011 年 42 巻 p.
325-340
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
遺跡から出土される考古遺物として重要なガラスや陶器の中には,特異的に鉛や錫などの重元素を多く含むタイプがある.考古化学では,簡易迅速・非破壊で測定可能な蛍光X線分析は重宝されているが,このような重元素を多く含む考古遺物に対してはマトリックス効果のため定量分析が困難であった.本研究では,鉛ガラスや鉛系釉薬に近い標準試料を用いることで,実験的補正定量法の観点から重元素の含有量に関係なく検量線を作成できるような補正モデルを探索した.その結果,考古遺物の成分元素の酸化物や炭酸塩を混合し,ブリケット法で作成した自家標準試料の測定データから,PbOとSnO2の含有量を変数とする補正モデルを導出した.
提案した補正法により各成分の検量線を作成したところ,全成分の検量線の直線性が飛躍的に改善された.実際の鉛釉薬が施されたイスラーム陶器の遺跡出土試料の分析に応用したところ,より正確な特性化プロットを作成することができた.本法はこれまで蛍光X線分析による定量が困難であった鉛ガラスや鉛系釉薬の定量分析を可能にし,実用性と汎用性の高い方法となることが期待される.
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早川 慎二郎, 田畑 春奈, 島本 達也, 森 聡美, 廣川 健
2011 年 42 巻 p.
341-346
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
有機薄膜上に形成したAu膜を作用電極に用いる電気化学セルを開発し,X線を背面照射する配置で電極表面の蛍光X線測定を実現した.開発したセルを用いてCuめっき膜のその場観察を行い,ストリップ時の電気量から算出されるCu膜厚と同様な結果を蛍光X線検出により得ることができた.封入型X線源を光源に用いる本測定での検出限界はCu膜厚にして0.3 nm程度であり,作用電極の面積をビームサイズ程度にすることで,絶対量として20 ng程度まで低減することができる.
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吉井 雄一, 保倉 明子, 阿部 知子, 井藤賀 操, 榊原 均, 寺田 靖子, 中井 泉
2011 年 42 巻 p.
347-358
発行日: 2011/03/31
公開日: 2023/11/29
ジャーナル
フリー
センボンゴケ科イワマセンボンゴケ属のホンモンジゴケ(Scopelophila cataractae)の重金属蓄積機構を解明するため,ホンモンジゴケ茎葉体におけるCuおよびPbの分布と化学形態を明らかにした.野外から採取した茎葉体に10 mM PbCl2水溶液を添加して20分間振とうした試料について放射光μ-XRFイメージング(ビームサイズ3.5 μm (V) × 5.5 μm (H))を行い,1-2 mmという微小なコケの葉におけるPbとCuの元素分布を初めてin vivoで可視化することができた.添加したPbと野外で取り込まれたCuは,いずれも主として細胞壁に蓄積されており,中肋の厚壁細胞(ステライドセル)では特にCuが高濃度に蓄積されていることがわかった.また,0.01 M塩酸水溶液と茎葉体を20分間振とうしたところ,大部分のCuは水溶液に抽出されるが,中肋部に蓄積したCuは明瞭に残っていることが示された.また茎葉体のin vivo蛍光XAFS測定により,ホンモンジゴケ体内のCuは酢酸銅(II)と,Pbはステアリン酸鉛(II)と似た化学形態であり,CuとPbはいずれもカルボキシル基の酸素と結合していることが示された.以上より,PbとCuは細胞壁に含まれる酸性糖由来のカルボキシル基と結合して蓄積されていると考えられる.また,金属蓄積種として知られる,イワマセンボンゴケ(Scopelophila ligulata)およびオオミズゴケ(Sphagnum palustre)の葉についてもPbを添加し,種間比較を行った.イワマセンボンゴケにおいては,ホンモンジゴケと同様に細胞壁および中肋にPbの蓄積が見られた.中肋を持たないオオミズゴケの葉においては,Pbは透明細胞よりも葉緑細胞に高濃度に蓄積されることが明らかになった.
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