健常人女性のブリーチ処理毛髪について,毛根から一定距離の部位でのCa分布を高分解能密着顕微鏡と高感度マイクロビーム蛍光X線マッピングの手法によって求め,シスチンの酸化度(システイン酸の生成)との相関を調べた.その結果シスチンの酸化が進んだ試料は,よりCaが多く蓄積する傾向が明瞭であった.また,酸化は周辺部から進み,Ca蓄積はそれに並行しているようにみえた.さらに極端に酸化が進むと毛髪全体にCa蓄積が見られた.X線分析顕微鏡による未処理毛髪に対するCa吸着実験もCa蓄積と酸化度との密接な相関を支持した.なお,毛髪中心部のメデュラでのCa含量の増大は,酸化以外の要因と考えられた.