X線分析の進歩
Online ISSN : 2758-3651
Print ISSN : 0911-7806
原著論文
放射光蛍光X線分析を用いる重金属超蓄積シダ植物ヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)におけるCd蓄積機構の研究
田岡 裕規保倉 明子後藤 文之吉原 利一阿部 知子寺田 靖子中井 泉
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2012 年 43 巻 p. 355-368

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抄録

Cdの超蓄積植物であるシダ植物ヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)の未分化細胞塊(カルス)から分化させた個体について,200 μMの濃度のCd添加培地で2週間栽培し,放射光μ-XRFイメージングとXAFS分析を行った.いくつかの生長ステージにおける,Cdの元素分布と化学形態を明らかにすることを目的とした.μ-XRFイメージングの結果から,根においてCdはいずれの生長ステージにおいても表皮や皮層,内皮,細胞壁付近や維管束付近に多く分布していた.このことから根から吸収されたCdは細胞壁を介したアポプラスト輸送により植物組織に輸送される可能性が示唆された.葉柄においては,根と同様にCdは維管束,皮層,表皮に蓄積していることが分かった.しかし胞子体では維管束周辺にCdが多く蓄積しており,表皮や皮層にはあまり蓄積していなかった.葉ではCdは組織全体に蓄積していることが分かった.胞子体および幼植体におけるCd K吸収端XAFS測定の結果から,いずれの試料でも根ではCdは主に酸素配位子と結合して存在していることが分かった.一方地上部では,酸素配位子と硫黄配位子の2つの結合が確認された.

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© 2012 公益社団法人日本分析化学会 X線分析研究懇談会
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